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オンラインセミナー「韓国新政権下での日韓関係と東アジアの行方」を実施しました2022.04.01 | 

3月20日に慶應義塾大学 名誉教授の添谷芳秀氏をお招きし、「韓国新政権下での日韓関係と東アジアの行方」をテーマとしてオンラインセミナーを行いました。3月9日の韓国での大統領選挙を受け、今後の日韓関係の変化や、米中の朝鮮半島への関与の変化、また、自由と民主主義に基づく朝鮮半島の統一へ向けて、日本の関与や実質的利益についてお話いただきました。

多くの内容の中から、要点を抜粋します。

―ご自身の研究分野について
■元々、韓国、朝鮮半島の地域研究的なアプローチ専門家ではなく、国際政治ないしはアジアの国際関係の中で日本を捉える視点からの日本外交論があえて専門といえば専門である。
■日韓関係との縁が深くなった理由について。戦後の日本に対する国際イメージは二分化されている。すなわち、韓国、中国からは軍国主義の復活と言われ、国内では戦後は平和主義に徹している、というある意味、両極端の姿勢、全く違った言い方で説明してきている。それに対して、一つの同じ言い方で説明可能な外交政策はないのかという問題意識を1990年台から持ち始めた。
■その結論として、「日本のミドルパワー外交」というコンセプトに辿り着いた。日本が戦後、戦略的に歩んできた道、それはミドルパワー的なものであったのではないか。ここには、理論的確信を持っている。

日韓は同じ課題を共有すると強調する添谷氏

■韓国の常識として、欧米の専門家も持っているのは朝鮮半島は4大国、すなわち、アメリカ、中国、ロシア、日本、に囲まれているというのが韓国でも主流であるが、そうではなく、日本と韓国がアメリカ、中国、ロシアという核大国、一国主義を厭わない国に囲まれている。日本を大国主義の3国と同列に見ている限り、的確な物の見方、日韓関係が重要だという見方は出てこない。
■東アジアの未来に対しても同じような見方を共有すべきであり、これはリアリズムだと感じるが、実際の観点としてはそうではない。

―今回のウクライナ侵攻に際して
■日韓関係と直接の関係はないが、今回、ウクライナで起きていることに関して。

今回のロシアのウクライナ侵攻について触れる添谷氏

■マクロな意味でのインパクトはこれから起こる。ロシア帝国が冷戦後解体され、それに対する怨念が残っている。その意味でも、冷戦の終わりの延長線上の現象である。
■連合国、国際連合(UN)が機能不全を起こしている。常任理事国に中国、ロシアが存在し、当事者になれば機能しなくなる。それはアメリカの場合でも起きていた。国連は再編成されなければならない、というのは明確である。
■今回のロシアの行動は国際法を無視した行動であるが、国際法の次元で言うと、戦後秩序の中で武力行使が許されるのは、自衛か国連決議がある場合であり、集団的自衛権、も認められている。ロシアは自衛の論理の中でいろんな理屈を主張しているが、
今回のケースでは集団的自衛も存在せず、国際的には参戦する理屈が立たない。無理矢理自衛の論理を立てると、国際法無視という次元でロシアと同じ次元に立ってしまい、国際的にロシア一辺倒の反対理論から状況が変わってきてしまう懸念がある。
■明白な国際法違反が起きている状況の中で、だからこそ国際法の重要性は再確認されなければならない。ウエストファリア体制以降の今日の状況を無に帰することはできない。着目されている。
■ポストウクライナの世界、ロシアが勝利した場合と敗北した場合の二つの世界を同時進行的に見定めていかなければならない。

―台湾との関係は

■台湾有事の際のアメリカによる軍事介入については、台湾関係法がある。経済封鎖、軍事的危機が起きた場合は、憲法が定める適切な行動を取る必要があり、当然ながら、軍事的行動が含まれる、というのは危機になれば当然である。これがどのように解釈されるのか、という問題が残っている。
■経済制裁については、同じことが中国に起きた場合に、中国に及ぼすものは甚大である。中国は非常に豊かな生活をエンジョイしており、それが共産党に対する反対を弱めている。経済制裁が起こると、国民の不満が爆発するのでは、と考える。

―そのような国際的分脈の中で、日韓関係に目を向けると


■著書「米中の狭間を生きる」という本を書くきっかけは、韓国でムンジョンイン延世大学の先生が中心になって行った本「日本は今、何を考えているのか」の作成の中で、韓国の知識人にインタビューをしたらどうか、という働きかけがあったため。
その後、半年くらいかけて韓国の知識人にインタビューをして本をまとめた。この本の中に、現在の尹錫悦大統領の外交のブレーンがインタビュー対象として登場している。


■書籍でインタビューをした3人に対して、日本のメディアがたまたまインタビューをしており、その中で、「慰安婦問題、GSOMIAなどを別個に扱うのではなく、包括的な解決策を模索するのが重要」だと言うコメントがあった。
■中国に対する日韓の経済安保の重要性も増している。言論NPOが8年にわたって日韓の世論調査を行なっているが、韓国がクアッドに加わるべきか、という問いについて、50%を超える韓国人が加わるべきだ、と言っている。一部の知識人の先走った議論ではない、という感じがする。

同じくインタビューに応じた尹徳敏(ユンドンミン)氏の見解についても触れる

―結びに・・感情を排し外交理性を取り戻す
■日韓外交において、かなり感情に支配されてしまっている。ボールは相手のコートにある、という感覚を日本も韓国も持ってしまっている。しかし、理性的に考えた場合、これでいいはずがない。
■日韓が米中露に囲まれている。ロシアが今のウクライナのような事態を引き起こしている。大きな歴史的な一つの転換点になる。習近平体制になり、従来より中国による台湾解放(侵攻)のプログラムが時間軸が縮まったのではないかと考える。
■戦後国際秩序の中で日本は優等生であった。日本と韓国は志を同じくする国同士として、2国間の関係は決定的に重要である。理性的に考えれば当たり前だが、外交理性を取り戻すというのはそのような意味である。
■日本の大方の見方として、今まで日本は韓国を甘やかしすぎだという議論があるが、この議論は事実ではないと思うし、個人的に好まない。90年代以降、日本はそれなりに良心的な対応を努力してきた(アジア女性基金の設立など)そのような努力の結果、韓国の人の日本の歴史認識に対する見解も多元化してきた。その努力が理解されるべきだし、まず何より日本で理解されるべきである。
■金正恩がシンガポールに出てきた時から彼をテストしておくべきであった。彼がどこまで本気なのか、というのは試すべきだった、というのが当時からの発想。それをやると騙されるからやらない、という議論があったが、騙されないように強かな外交をやればよいと言う前提である。
■したたかに日韓の協力も含めて、他国間協力を維持しながら北を追い詰めていく。一般的な言い方しかできないが、最低限、一緒に悩むことができなければ、あまりみのりはないと思う。結論的に言えば、同じ船に乗っている日韓だということで、対局的な関係の構築をしていくべきであり、協力すべき課題はいくらでもある。

―質疑応答
質疑応答として、以下の質問(抜粋)が出されました。質問をQ、回答をAで示しています。

Q: 韓国文政権がまもなく終わりますが、あれだけ北朝鮮に歩みより、従北政権と批判されながらも、北朝鮮は無視続け、結局南北の外交成果はありませんでした。なぜ、北朝鮮はアメリカとの関係を優先し、体制維持を図ろうとしたにしても、かくも文政権との関係を重視せず、共に南北統一の進展を図ろうとしなかった、のでしょうか。保守政権になり、より困難になったと思うのですが。
A:北朝鮮がどのように文政権を理解して、何を考えていたのか、という問題である。観察からすると、文政権は基本的にイデオロギー的政権だった。自ら革命政権といったこともあった。北朝鮮との関係で言うと、保守派、親日派への対立、対決とつながるが、ピュアな韓国、朝鮮、と言うイメージを持っていて、ピュアな韓国を汚したのは日本の植民地支配である。戦後で言えば新日の残滓。これが残っている限り純粋な韓国は取り戻せない。北を見ると、純粋な朝鮮半島と言うのは分裂していない。同胞であり、統一の対象、そのような理解、感覚で北に対するアプローチをしていた。北からそれを見た場合に、イデオロギー性にかけるのか、現実を見るのか、といったときに、体制の維持もあるので、当然ながら現実をみると言うところかと考える。

Q: 韓国の新政権との間で、日韓関係がよくなることを期待していますが、北朝鮮の人権改善や民主化に向けた働きかけは、日韓が協働できる共通の目標になるとお考えでしょうか?
A:短期的成果はそう簡単ではない。長期的、対極的に課題を日韓が共有して、可能な限り共通のアプローチを取るのが重要である。具体的にどうかと言うのは、エンゲージすると言う話になるので、そうなると北に利用されるだけに終わる、と言う議論にもなってくる。現実のアジェンダを組み上げるのはそう簡単ではないと思うが、あとは漸進的な民主化が可能なのか、体制の崩壊か、と言う問題がつきまとう。崩壊になれば軍事的備えをしなければならない。そのような包括的な視点を持ちつつ、今の問題をその一部として捉えていく、と言うのが基本的にアプローチとなるかと考える。

Q:以前、添谷先生がワシントンで日韓間の学生交流による関係の改善を提案されましたが、民間外交や政府による学生交流はいかがでしょうか。
A:若干期待を込めた言い方になるが、若い人の感性は違うと思う。自分のゼミ生を韓国に連れていくと言うことを10年くらいやっていたが、学生交流をみているとすぐに仲良くなるし、その後も交流が続くと言うことはよく見ている。また、有名な話で、海外の留学生の中で、最初に仲良くなるのは日本と韓国だと言うことも聞く。
もっとすごい話で、世界の首都にある大使館の中で、日本と韓国の外交官が一番仲良くなる、と言う話もよく聞く。人間関係で言うと、日本と韓国は非常に親しみを持つ関係になっている。若い人ほどそう。ある人が言ったのが、歴史からくる日本への反感と、日本への親しみを英語で議論しており、心理学で言う”complex”という言葉を使ったが、その人は即座にそうではない、と答えた。”Complex”というのは、お互いが混ざり合っているイメージだが、そうではなく、これは”compartmentalization”だという言い方をした。すでに別々のものとして頭の中にある。歴史からくる日本の認識と、それ以外の文化の部分が、別々に存在していると言うことを聞き、そのことに納得をした。そういう人が増えているのではと思う。
歴史をつっつけば爆発する、それなりの反応があるが、そこをうまく処理すれば、非常にいい関係が築ける。日韓関係が、最近最悪だと言われていたのは、そこを突っついていたからであり、今の政権に期待できるのはそこはつつかないでやろうといっていることである。韓国はそのように言っているのに、日本はそうではない、と言っているのは、どちらが立派な外交をやっているのか、という話に第三国から見るとなる。
最後は日本に対して、韓国の新政権ができたからには、声を大きくして言いたい。そうなると、若い人へのインパクト。若い人が持っているポテンシャルはもっと大きく発揮されるべきではないか。

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