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多文化家族支援センター2015.11.30 | 

1. 多文化家族とは
 異なる文化的なバックグラウンドを持った家族のことを「多文化家族」と呼びます。日本において代表的な多文化家族は、日本人と外国籍の人による国際結婚ですが、外国人配偶者が日本国籍を取得した家族も、文化的ルーツが異なるという意味で多文化家族ということができます。また、中国人と韓国・朝鮮人、フィリピン人とブラジル人などの外国人同士の国際結婚家庭ももちろん含まれます。
 では、日本の多文化家族の数はどれくらいなのでしょうか?2010年に行われた国勢調査によると、日本における夫婦総数は3061万3187組で、日本人同士が3006万7334組、日本人と外国籍の夫婦31万9962組、同国籍同士を含む外国籍と外国籍夫婦が22万5891組でした。世帯数でいうと、外国人のいる一般世帯は109万3千世帯、うち外国人のみの世帯は70万3千世帯、外国人と日本人がいる世帯が38万8千世帯となります(国勢調査は5年ごとに行われ、2015年の国勢調査の報告書が出たらアップデートします)。
 尚、新たに国際結婚する人の数は近年減っていますが、日本国内における多文化家族の数自体は増え続けています。

※韓国では国際結婚の増加に対応して、2008年に「多文化家族支援法」が制定され、全国に多文化家族支援センターが設立されました。それに参考に、ここでは「多文化家族」という用語を使います。

2. 多文化家族が抱える問題
 異なる文化的バックグラウンドを持つため、そこに様々な問題も発生します。

①言語
 日本の国際結婚は妻が外国人である方が多く(約72%*)、子育ての面で妊娠時の診断、就学前検診の案内、予防接種、子ども手当、児童扶養手当…など様々な言語の壁にぶつかることが多いです。
 ビザや在留資格の手続きに関しては、かなり多言語化が進んできたとはいえ、社会全体で見ればまだ不十分な面が多いのが現状です。
*平成22年度 国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)

②文化・習慣
 食事から親戚との付き合い方、夫婦間の役割分担(ジェンダー)など様々な面で考え方の違いが出てきます。
 例えば、日本女性は大抵、床に座るときは正座しますが国によっては女性でもあぐらをかいて座る国もありますので、親族にびっくりされたりします。
 また、日本はお返し文化がありますが、お中元やお歳暮など日本人の妻か夫の家族から送られてきてもお返しするという習慣がないと、親族に常識のない外国人と思われ、親族間とのトラブルを引き起こす原因になることもあります。

③DV
 夫婦間でも言語が壁になって十分にコミュニケーションが取れない場合も多く、海外の親戚への送金や子どもの進学のことなどで、配偶者から暴力を受けるDV(ドメスティック・バイオレンス)の問題があります。
 直接的な暴力だけではなく、在留資格の更新に配偶者が協力しないといったケースもあります。

3. 多文化家族の政策の中の位置づけ
 これまで日本における外国人に関する国の政策は、法務省入国管理局が所管する外国人の出入国および在留の管理の政策のことであり、外国人を日本社会の構成員とみなし、人権を保障しつつ社会参画を促すような視点はきわめて乏しかったと言えるでしょう。
 実際、日本語教育、子どもの就学、雇用、社会保障などの行政サービスなど外国人受け入れに伴う問題は地域社会と市区町村に長らく丸投げされてきました。
 2000年代、在日外国人が急増したことを受け、2006年総務省が「地域における多文化共生推進プラン」を策定、各都道府県及び政令指定都市に多文化共生施策の推進を促しました。
 しかし、多文化家族は政策の中で独立した支援の対象として取り上げられておらず、在日外国人の中で「国際結婚家庭」という特別なカテゴリーのみを支援する施策を作るということに対して慎重な姿勢であると言えるでしょう。
 少子高齢化による人口や労働力の減少に対して、経済界や政界から「移民の受け入れ」を検討すべきという提案は何度もなされていますが、総合的な「移民政策」はなされていません。国がリーダーシップを発揮しない(できない)中で、「現場」レベルの努力によって日本の多文化共生は支えられているのが現状です。

4. 韓国における多文化家族支援
 国として多文化家族支援に消極的な日本に対し、韓国では国がイニシアティブを発揮し、支援体制を整えています。
 韓国では1990年代中ごろから国際結婚が増加し、2000年以降に主に韓国人男性と外国人女性同士の結婚が急増しました。それに対し、韓国は以下のような施策を実施してきました。

2007年 在韓外国人処遇基本法を施行(外国人居住者への社会適応支援策を実施する法的根拠)、法務部入国管理局は「出入国・外国人政策本部」に拡大改編される。
2008年 多文化家族支援法を施行(結婚移民者と国際結婚家庭の子どもへの支援策の基盤となる)、全国に多文化家族支援センターが設置される(2006年21か所→2011年200か所)。
2011年 多文化家族支援法が改正され、留学生の家族や、外国人労働者家族、脱北者家族などに支援対象の範囲が拡大される。

 多文化家族支援センターでは、韓国語教育、多文化社会理解教育、家族相談、就労支援、訪問教育、通訳・翻訳など様々なサービスをワンストップで提供しており、地域の多文化共生の拠点になっています。
 ただそこで行われているプログラムは、あくまで韓国社会への統合を促す同化政策的な面が強いという批判もあります。

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