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「東アジアを構築する新しい人間観」をテーマにオンラインセミナーを開催しました2021.04.09 | 

 3月27日の午後7時より、京都大学教授の小倉紀蔵先生をお招きし、「東アジアを構築する新しい人間観」というテーマで講演をいただきました。

 小倉先生は、東京大学文学部ドイツ文学科を卒業され、電通に入社後、韓国に留学。ソウル大学校哲学科大学院東洋哲学専攻博士課程単位取得。2012年から、京都大学大学院人間・環境学研究科教授でいらっしゃいます。NHK教育テレビハングル講座講師、日韓友情年2005実行委員を歴任されています。

 国家間の摩擦や対立が目立つ東アジアですが、当日は日韓関係の在り方に注目し、持つべき視点について詳しい内容が語られました。その中から、講演の要点を紹介します。
 当日の動画は、下記のYouTubeにありますので、ぜひご覧ください。

■思想、哲学的なバックグラウンドから、人間観というところに焦点を合わせて今回のテーマを考察。
■安全保障、外交、経済、政治、、、という側面ではなく、思想や哲学で二国間関係、外国との関係を考察。

―日韓関係は時局問題ではない
■日韓関係の枠組み、とは何か。日々、テレビである政治問題、政界ウォッチング、それは日韓関係ではなく、一部の表層の話である。その一部の表層を全体化してはいけない。そうではなく、1億2千万人の日本人と5千万の韓国人の関係の総体が日韓関係。
■政治外交の研究者やジャーナリスト(いわゆるウォッチャー)が語ることのみを聞いて日韓の対立を煽るもの、断交を叫ぶものも多いが、日韓関係が今の状態を保つために数十年間の努力があり、そのために努力を払ってきた人たちへの冒涜。その関係を構築してきた方々や努力をリスペクトするべき。

―「日韓」はどこに行こうとしているのか
■日韓、韓国そして朝鮮半島はどこに向かって行こうとしているのか。これがわからなくて、多くの日本人は不安になっている。ここには中国問題だけではなく、実は世界全体の思想的潮流が関わっている。
■朝鮮半島問題は日本問題と深く連動している。
■日本文明は今、曲がり角に来ている。このまま衰退していくか、それとも、世界の中で重要であるという方向性に行くことができるか。そこに、朝鮮半島問題が関わってきている。
■今の東アジアは非常に危険な状態。中国は自分達のスタンダード(儒教的なもの)を立ち上げてそれをプラットフォームにしたいが、政権が思想的に整理できていない状態にある。アメリカも自分たちが推進してきた価値観、民主主義、自由 
を声高に語れば語るほど、自信のなさが強調されている。欧米が作ってきた自由民主主義に対して、東アジアの民主国側からいろんな疑問点が出てきている。
■一方で、例えば北朝鮮の主体思想の方がより良い未来を描けるか。それを認めることは難しい。

日韓の歴史的背景と今後の関係性について語る小倉氏

日韓の歴史的背景と今後の関係性について語る小倉氏

―韓国とはなにか、どこに行こうとしているか  
■そこで、韓国が一体どういう国なのかをしっかりと見ることが重要。近代側の国家なのか、反近代側なのかの整理がつかずに思想的に分裂しているのが韓国である。
■併合植民地時代(小倉氏の造語)は、朝鮮は全国民のアイデンティティ形成の時期であった。その時期に、日本は朝鮮に日本というアイデンティティを押し付けた。
併合だけでもない植民地だけでもない併合植民地であったということが、朝鮮・韓国のアイデンティティの形成において非常に重要で難しいポイントであり、その解決が未だについていない。
■韓国、北朝鮮の人たちはこの併合の部分は見ないようにしていることが問題。
■韓国は植民地支配された主要国家地域の中で、ほぼ唯一先進国になった国。韓国人は先進国としての責任を担って歩んでいけばいいのか、グリーバンス(近代に対する不平不満)国家として不平不満を訴えていればいいのかが分からなくなっている。特に文在寅政権はグリーバンス国家の側面の意識が強い。
■一方で安倍政権はそうしたグリーバンス国家の韓国を切り捨てる、突っぱねるメッセージしか出さなかった。戦後、資本主義の道を進み高度成長した韓国に対して、日本が経済協力をした側面を見ないことが安倍政権は不満だった。
■日本が応答しなくてはならないことも当然あるし、韓国側も自分たちが先進国であることを直視しなければならない。そうしてこそ両国の関係は構築できる。

―「対抗近代」といううねり
■現在、洋の東西で「対抗近代」と言うべき動きが同時に起きている。ヨーロッパが生み出した近代という思想―自由と平等、平等と差別など全てが含まれており、欧米と日本以外の世界は、そこに対する憧れや反発があり、イスラムの普遍主義のような形として現れてきている。
■対抗近代の国々に対して、ヨーロッパはSDGsなどの取り組みを打ち出し、自然保護を訴えている。しかし、あまりにも上から目線ではないのか。近代思想を打ち出し、自然破壊を始めた張本人であるヨーロッパの欺瞞が露わになってきている。

和解と繁栄と平和のモデル形成の大切さを説明

和解と繁栄と平和のモデル形成の大切さを説明

―「日韓モデル」の構築へ
■そのような欧米の動きに対して「日韓モデル」を打ち出すのはどうか。今までの日韓関係を完全に新しく解釈しようという試みであり、具体的には1965年日韓条約以降の日韓関係を最大限肯定的に見てみる努力をすること。
欧米が先を入っており、東アジアが遅れてると考えるのではなく、欧米に先駆けて懸案問題(慰安婦問題など)を取り上げて取り組んだ。摩擦や対立を超え、対等
な関係を構築してきた「和解と繁栄と平和のための日韓モデル」
■欧米内部については、戦後の国家間の関係はうまく行っているかもしれないが、欧米と外部(フランスとアフリカ、など)については、失敗が明らかになりつつある。一方、日韓では、1965年以降、かつて侵略/された側が曲がりなりにも
対等な関係を構築してき続けた結果、韓国は世界10位の経済規模を誇る先進国となり、近代という枠組みの中で成功した。その部分をもっと見るべきではないか。
■東アジアこそ典型的な失敗の地域であると認識するのが「正しい見方」とされているが、我々東アジアこそが世界の最先端をいっていると果敢に考えてみる事から始めてみても良いのではないか。
■その上で大切なこと。第一は歴史の直視記憶反省であり、日韓両国に必要なこと。第二は近代の克服であり、気候変動などの近代の克服であり、その作業は日韓がリードしていかなくてはならない。第三のテーマは哲学の構築。西洋哲学の文献研究ではなく、自分たちの現場でどう思考するか。歴史を見る目を持つ。
■そのための人間観の一つとしての「多重主体主義」という哲学的立場。
西洋近代が打ち出した、人間は一個のインディビジュアルという考え方ではなく、
東アジアの言葉で人間を捉え直す試みが必要。
■歴史問題の和解のためには、和解とは、人間とは、生命とは、、、それぞれ、根本的なレベル、深いレベルからの考察が必要。
■また、「アイデンティティ」を持ちつつ「コンセプト」で自由につながっていくことも必要ではないか。「日本人」というアイデンティティを持ちながら、「韓国のBTS(防弾少年団)」が好き、などのように。。

―「歴史」を「生きる」「人間」の「尊厳」  
■歴史を生きる人間とは何か。その人間にとって尊厳とは何か。そもそも歴史を生きるとは。歴史に痛めつけられた人の尊厳をどのように扱えばいいのか、等々。
これまでの人間観を変える作業をしないと、上のような問いには答えられないだろう。
■戦後の日韓関係は人間概念を成長させてきた実践の過程であった。例えば、慰安婦問題は75年前は問題ではなかった。「女性の尊厳」という概念一つとっても、摩擦と対立を繰り広げながら、人間の概念を練り上げてきた。だから、問題をただ悲観する必要はない。

 と言った内容が講義されました。
 質疑応答の内容も含めて、多くの貴重な内容がございますので、ぜひ動画をご覧ください。

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