4月23日 KOREA WAVE記事
「北朝鮮、観光業再開に本腰…平壌マラソンに続き「白頭山」も本格PR」 https://news.yahoo.co.jp/articles/9e0e30689d1f3439f9dd9bc37e34b0f56119d60fーーーこのようなネットニュースがありました。北朝鮮の金正恩氏が中国やロシアを相手に観光に力を入れて利益を得ようとしているようです。このニュースに関して、川崎さんの体験を交えて教えていただけますか?はい。現在、北朝鮮の産業は基本的に麻痺していて、
お金を作るところがありません。でも、
北朝鮮には実は手付かずの自然があり、観光資源は無尽蔵にあります。金日成・金正日時代には軍事を先立ててばかりで、
そのような観光資源を活用しませんでした。北朝鮮の法律で、
合営法というものが1984年に出ました。
これは簡単にいうと外国からお金を引っ張ってきて北朝鮮の産業を
盛り立てる為の法律です。(※合営法・・・
外国資本と北朝鮮の国有企業や機関との共同事業を合法化・
促進するための法律で、
特に羅先経済貿易地帯や開城工業団地などを優先的に実施され、「
合法的に導入された資本・資産は国有化しない」と明記された。
1984年の初制定後、何度か改正され、
90年代以降は経済難を背景に外貨獲得を目的として法整備された
。)
当時、在日帰国者である私にも声がかかりました。私は「しばらく様子を見ます」と返答しました。北朝鮮には莫大な観光資源がありますから、私は「合営法がその通りに実施されたら、北朝鮮の観光業を引き受けます。そうしたら国民が観光業だけで食べていけるようにします」と返答していました。
ーーー北朝鮮の観光資源はそんなに素晴らしいのですか?
日本統治時代に建設された水力発電所のための人造湖がありますが、周辺の林には鹿の群れが生息していたり、息を呑むほど美しいところでした。そこに簡単な宿泊施設を作って、小さな遊覧船を出し、バーベキューでもできるようにするだけで、十分に成り立つのです。
しかし実際には、金正日の時代まではダメでした。朝鮮総連を通して日本にいる在日の事業家は、合営法によってたくさんの投資をしました。ところが資本主義のシステムを知らない北朝鮮の高官らは彼らに利益を得させることをせず、投資した側としてはマイナス続きになり、合同事業は続きませんでした。
それが今になって金正恩氏が観光業に目を向けています。工業よりは観光の方が儲かるということがわかって、色々と計画しているのだろうと思います。
北朝鮮には平壌近郊の妙香山、白頭山、金剛山などの美しい資源があります。私は母が日本から北朝鮮を訪ねてきた際に金剛山観光を予約して来たため、一緒に金剛山に行ったことがあります。北朝鮮の一般国民の中では非常に珍しい、金剛山に行ったことのある人間です。本当に美しいところでした。
問題はこうした観光資源を活用して、北朝鮮がうまくやり遂げられるかどうかです。金正恩氏は馬息嶺(マシクリョン)スキー場も作りました。しかしあまりうまくいっていないようです。北朝鮮の庶民はとてもじゃないけど行けませんし、そもそもスキーを知りません。中国からの観光客も多くありません。馬息嶺の周りは山と雪がある以外は何もない、人口の少ない場所です。観光地にするためにはスキー場だけじゃなく、ホテル、レストラン、交通手段など、観光地を構成する様々な要素が必要なのに、北朝鮮にはそれをすべて揃えて準備することができません。
仮に観光事業がうまく行ったとしても、金正恩政権は稼いだお金を国民には使いません。それが問題です。お金が手に入っても、体制維持のため、軍事に全部回してしまいます。
結論的に、今やっている観光業はうまくいかないだろうと私は思いますし、儲けたお金を軍事に使うのでは、反対ですね。
ーーー本来活かされるべき大自然が泣いていますね。一方、北朝鮮は厳格な階級社会だと聞きます。特権階級は非常に限られていますので、観光にお金を使える人は北朝鮮の中には多くないでしょうね?
そうです。北朝鮮社会は、特権階級の生活のために、階級性を徹底して守らなければならない仕組みになっています。
庶民から絞り上げたお金で、特権階級の人たちは裕福な生活をしています。また、一般国民の中にも階級の差による明暗はくっきりと表れます。例えば日本でいう区役所の役人のような、それほど高くない地位の家族でも、沢山の人が配給がもらえずに餓死する一方で、彼らは配給所に行けばいくらでも前倒しで配給を受け取ることができ、山盛りご飯を食べていました。
こういう階級社会の恩恵を受ける中で、その人たちは金正恩政権を擁護するようになっています。金正恩政権は、ある意味ではこういった階級差を国民に実感させることで、その頂点に立つ自らを擁護するように周囲の人たちを仕向けているというか、そういう社会構造になっているのです。
最近では、北朝鮮はもう抜けそうなガタガタの歯のような状態だったのに、ロシアの戦争のおかげで少し息を吹き返したようで、態度が大きくなって来ました。こちらとしてはとても嘆かわしいと感じています。
ーーーありがとうございました。(終)
みなさん、いかがでしたか?