HOME >  我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった

我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった2018.10.25 | 

 この言葉は、スイス人の作家マックス・フリッシュが50年以上前に言ったものです。 外国人労働者や移民、そして難民をどの程度、どのように受け入れるかは欧米の先進国が共通に頭を悩ませている問題です。
 ドイツでは、この問題への対処に対する不満から、メルケル首相率いる与党キリスト教民主同盟(CDU)が10月の地方選で大敗し、メルケル首相は2021年の任期満了をもって首相の職を退くと発表しました。経済絶好調で、長らくEUの「盟主」として君臨してきたメルケル首相でもこの問題で足元をすくわれたのです。

 日本においても10月24日から始まった臨時国会で入国管理法改正が最大の争点となっています。政府は新たな在留資格を作って外国人労働者の受け入れを拡大することを目指し、今国会中の成立を目指しています。

 この改正案では、具体的には二つの在留資格制度を新設することになっています。「特定技能1号」は、一定の知識・経験を要する業務に就く人材を対象に、日本語試験や簡単な技能試験に合格した外国人に、最長5年の在留を認めるもの。 もう一つの「特定技能2号」は、熟練した技能が必要な業務に就く人材と認められた外国人に認め、在留期間の更新を可能にするというもの。後者については家族の帯同も認めるとのことです。ほぼ「永住権」を与えると言っていいでしょう。

 これは「いわゆる移民政策は採らない」として、単純労働に当たる業種については外国人労働者の就業を認めてこなかった従来の政策を大きな転換です。(今も、「技能実習生」という名目の労働者を入れてはいますが)

 この背景にあるのが言うまでもなく深刻な人手不足です。あと5年もすれば、最大の人口ボリュームゾーンである団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、さらに人手不足に拍車がかかります。
 長期的スパンで見ても、この50年で生産年齢人口が約3,000万人も減少すると予想されています。ちなみに国連加盟国の75%以上の国は人口が3,000万人以下です。

n3502140
 日本の労働生産人口の推移
 出典 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc135230.html

 しかし、人手不足だからと言ってなし崩し的に外国人労働者を受け入れてもいいのでしょうか?  今、多くの技能実習生が劣悪な環境の中で働かせられていると指摘されています。2017年には技能実習生の失踪者が7,000人を超え、低賃金や長時間労働、パワハラや暴力など深刻な問題が浮かび上がっています。
 実習生の中には「日本に来る前は日本が大好きだったけど、今は大嫌いになった」という声も多く、現段階で様々なハレーションが起きているのです。

 労働者はロボットではなく、地域社会で暮らす住民の一人であり、結婚もすれば子どもも生まれます。非人間的な扱いをされれば当然怒りますし、親切にされれば感謝するでしょう。  その当たり前の前提=「共通のアイデンティティ」を持っているということを、「ホスト」側の日本社会がちゃんと認識するところから始めないといけないのではないでしょうか。

前のページへは、ブラウザの戻るボタンでお戻りください。
このページのトップへ