HOME >  米国Newsweek誌がワンコリア国際フォーラム(2018年12月)の主張に注目

米国Newsweek誌がワンコリア国際フォーラム(2018年12月)の主張に注目2019.02.14 | 

 2018年12月に、ニューズウィークは、米朝関係の将来に関するトム・オコナー氏の記事(下記)を発表しました。
 その記事では、ワシントンで開催されたワンコリア国際フォーラムでのヒョンジン・P・ムンGPF理事長(以下、ムン理事長。もしくはムン氏)の発言の一部が引用されました。「コリアン・ドリーム: 統一コリアへのビジョン」の著者でもあるムン理事長は、アメリカ合衆国や韓国、その他の国々が朝鮮半島の戦略的なアプローチを、平和的な再統一にフォーカスしたものにすべきであると力説しました。

 ニューズウィークの記事の全文(英語)はコチラから閲覧できます。
 ワンコリア国際フォーラムでのムン理事長の基調講演の全文(英語)はコチラから閲覧できます。

 以下、オコナー氏の記事となります。

「北朝鮮がついに自分たちの要求を明らかに。
2019年はドナルド・トランプ大統領と金正恩氏にとって劇的な年になるという専門家たちの見解」

ニューズウィーク
トム・オコナー

2018年12月20日

 北朝鮮は非核化協定の条件を明確にし、平和的プロセスという過去にはありえなかったことを意味するような内容を「最後通牒」としてアメリカ合衆国に提示してきました。もうすぐ新年に入るこの時、新年(2019年)は北東アジアの外交は変動に満ちた年になるだろうと専門家たちは語りました。

 冷戦時代のライバルである北朝鮮と韓国の関係はこの一年大きな進展があり、歴史的な雪解けムードの中にあります。(それとは対照的に)米国は太平洋の同盟国(韓国のこと)とは違って、北朝鮮の悪名高い政府との間に基盤を築こうと非常に苦労した1年でした。それでも、トランプ大統領と金正恩氏は、両国間の何十年にもわたる紛争を解決するために、これまでにない前進を遂げました。

 朝鮮中央通信社(北朝鮮のメディア)から発表された解説を読むと、若き金正恩氏が、6月に行われた文大統領との歴史的な会談の中で核兵器を放棄することに合意した意図がはっきりとします。

 アメリカが北朝鮮に対する制裁を継続しており、アメリカ国務省が「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」と定義している内容が実現されるまでは平和とは呼ばないと拒否する姿勢を貫いていることに怒りを覚えている朝鮮中央通信社は、「アメリカ政府が最近の行動をこのまま続けるのであれば、朝鮮半島全体ではなくて、北朝鮮だけが非核化されるという’ミスリーディング的な理解’につながるだけであり、顔面蒼白ものである」と主張しています。

「アメリカは今こそ、朝鮮半島の非核化の本当の意味を認識しなければならない。特に、地政学を勉強しなければならない」とKCNA(朝鮮中央通信社)は言います。

「朝鮮半島について語るのであれば、それは私たち朝鮮民主主義人民共和国の領土だけを指すのではなく、それはアメリカ合衆国が核兵器を含む軍事力を行使している‘南朝鮮’全体の領域も指します。ですから朝鮮半島の完全な非核化ということを言うなら、それは南北朝鮮から核の脅威の源泉を取り除くことだけを意味するのでなく、それは朝鮮半島の周辺のエリア全体から核の脅威を取り除くことを意味したものでなければならないはずだ」と同通信社は語ります。

 この記事の主張は、長年、核兵器の装備はアメリカが軍事的侵攻をしてくる脅威を想定してのものであるという北朝鮮の従来の方針から大きく変わるものではありませんが、そのように理解するよりはむしろ、平和交渉が少なくとも公式的にはスローダウンしている時期に、しっかりとした言葉で、金正恩氏の考えている構想を明確化したものであると捉えるのが正しいでしょう。北朝鮮は、核やミサイルのテストを今や1年にもわたって停止したり、アメリカ人捕虜を解放したり、主要な軍事施設を破壊したりして、一見すると平和への譲歩ととれる行動をとっており、それをトランプ政権は褒めちぎっていますが、アメリカは何を放棄するつもりがあるのかについて、ほとんど語ったことはありません。

「私は、今という時がいろいろな意味で歴史的な時であり、一生に一度しかないようなことが起こっている時だと、どうしても思ってしますのです」と南カルフォルニア大学のデービッド・カング教授は、在米韓国人協会によって主催された会議で語りました。「アメリカはせっかく受け取ったボールを転がし続けて、前に進む戦略を本当に持てるだろうか?」と同教授は語ります。

 北朝鮮がこれまで行ってきたことにも言及しながら、カング教授は「アメリカサイドの問題は私たちは何をするのか、何を(交渉の)テーブルに出すつもりなのかを決めることです」と語ります。

 トランプ大統領は、米韓軍事演習のうち「挑発的な性格を帯びた」ものは一時中断すると6月に発表しましたが、(実際)4月の模擬合同軍事演習はその規模を縮小させたものでした。トランプ政権は北朝鮮に対する制裁を堅持していましたが、その一方で、もしかすると平和宣言が朝鮮半島で発表され、アメリカ合衆国と韓国が北朝鮮とその共産主義同盟国である中国とソ連が戦うことになった1950年代の朝鮮戦争を終結させるかもしれない動きが出てくる中で、そのような制裁政策に対して疑問の声が出ています。

 トランプ大統領と北朝鮮の最高指導者である金正恩氏が、シンガポールで開かれた歴史的な米朝首脳会談で6月12日、調印式にて握手しました。

 今までであれば、アメリカ合衆国は、一見すると平和的な申し出が北朝鮮からされたとしても、アメリカの非核化の原則方針に必ず戻り、方針を曲げずにやってきました。しかしながら、そのような中で、ワシントン(アメリカ)と平壌(北朝鮮)の交渉は水面下で継続しており、トランプ大統領と金氏の間で二回目となる首脳会談が来年(2019年)早々のいつか、もしかすると来月にも実施される準備が進んでいます。

 アメリカと北朝鮮がどのように交渉を進めていくべきかについて対立する見解を双方が持っている中で、いかに両国が合意点を見出していくかという試行錯誤について、トマス・ハバード元駐韓米国大使は「来たる年(2019年)は、一進一退のようなものがあり、恐らく、今年(2018年)私たちが体験した以上のドラマティックな一進一退が見られることでしょう」と語りました。

「来年は、ハードワークな一年になるでしょう。私たちはアメリカ合衆国にたくさんの基盤があり、大統領の姿勢でさえも影響を与える力があります」とハバード元大使は在米韓国人協会の集会で語りました。

 同時に、ハバード氏は、下院の過半数を占めることになった民主党員でさえ、現在の米朝対話路線を批判してブロックすることは自分たちの得になるとは全く考えていないと、見ています。(そんなことを批判しなくても※)「大統領の行動に批判材料が山ほどあります」し、ロシア疑惑もありますし、景気の低迷懸念などいくらでも大統領に攻勢をかけることのできるカードが、大統領の政敵にはあるからです。

 カング教授によると、金正恩氏は、この2年間、「非常にクリアな」戦略を追求しつづけて、軍事の増強を約束し、またそれを実行し、そして交渉のテーブルについたのです。対して、トランプのビジョンは不明確でした。カング教授は、「左であれ右であれ、民主党員であれ共和党員であれ、非核化が最重要事項であり、制裁を継続することは広く合意されていますが、私たちもご存知のようにトランプ大統領はワイルドカードであり、彼がシンガポールで金正恩氏と会うとは誰も決して予測できなかった」ことでした。

 しかし、専門家たちの意見は、この1年間で南北朝鮮の対話が進んでいるからということが理由でないにしても、朝鮮半島情勢が昨年(2017年)の今頃のような緊張状態にまで悪化することは、まずないということで一致しています。

 トランプ大統領が彼自身の国内の問題や首尾一貫した外交政策を練ることに取り組んでいるさなか、韓国の文在寅大統領は南北朝鮮合同の取り組みを大きく前進させることができた一年でした。この傾向は2019年にさらに拡大していくはずです。金正恩氏が今後ソウルを訪問することはありそうにありませんが、現在の雪解けムードが継続するのであれば、南北首脳会談がまた開催される可能性はありえます。

「私は一人のアメリカ人として、韓国が北朝鮮を(国際)世界に引き込む上で中心的な役割を果たして欲しいと願っています。私は個人的には、韓国が北朝鮮との交渉を先導し、アメリカはいろいろ注意喚起したり、アドバイスしたりする立場に徹するというのが良いと感じます」とハバード氏は言います。

 金正恩氏も文大統領も、この1年の首脳会談でお互いに暖かく抱擁しあい、共同宣言も行い、具体的な成果を実際生み出しました。南北朝鮮両国は、世界中でもっとも強固に要塞化された軍事境界線によって隔たれた両国を結ぶJSA(共同警備地区)の地雷を除去した後、さらに、先月(2018年11月)には軍事的拠点(監視所)を破壊して、共同で検証も行いました。その結果、両国が第二次世界大戦後、米国とソ連によって分裂して以来、はじめて南北朝鮮の軍隊がはじめて平和的に軍事境界線を相互に移動することができました。

 グローバル・ピース・ファウンデーションの創設者であるムン氏は、ワシントンで先週開かれたワンコリア国際フォーラムで演説した時、韓国主導の平和へのアプローチを提唱しました。また、アメリカは、朝鮮半島の両国が再統一という選択肢を公式的政策として採用することができるよう協力し、朝鮮半島に危機が起きても軍事的選択はいかなるものも控えるようにと促しました。

「アメリカは(非核化という)狭い目標のみをターゲットにしたエンドゲームでは、特に、希望的な観測やひどい計画のゆえにゴールラインがころころ変わるような時、うまくいかないことを認識すべきです。これは最近の歴史でもあまりにも頻繁に論証されていることです。ベトナムやイラク、最近ではアフガニスタンでの軍事行動は失敗したり、いつまでも終わらなかったりしましたが、それらがこの証拠です。とてつもない人命とお金を犠牲にしながら、このような軍事行動は、限定的な目的で遂行されてしまいました。アメリカの政策は、(自分たちの政策によりもたらされる)全体的な結果を正しく予測することができず、また、アメリカが発展しうる結果を達成するためにはアメリカが時間と資源をどれほど投入しなければならないかを正しく認識することができませんでした」とムン氏は言います。

「私は、大韓民国やアメリカ、その他の国々がそれぞれの国のアプローチを見直すように促したいです。私はアメリカが朝鮮半島政策のフォーカスを広げて、非核化だけでなく、統一コリアというより広い文脈の中で政策を考えていくべきだと信じています。統一コリアは、周辺諸国のサポートを得ながら、はっきりと述べられ、そして積極的に追求された方針を具現化した国となるべきです。とにかく統一されるならば何でもいいということでは決してありません。もちろん、北朝鮮がいう意味の統一ではありません。統一コリアが実現されるとすれば、それは、韓国の独立運動に携わった人々の情熱に思いを馳せ、それを最終的に実現するものとなることでしょう」とムン氏は最後に締めくくりました。

このページのトップへ