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グローバル・ユース・サミット(GYS)でのジム・フリンGPF世界会長のメッセージを紹介します2020.09.09 |
ワシントンDCから、今回のグローバル・ユース・サミット2020にフィリピンをはじめとして世界中から参加している皆様にご挨拶いたします。
まずグローバル・ユース・サミットの第8回の集会を組織するために尽力された方々―SM ケア、コンスエロ・ファウンデーション、GPFフィリピンの皆様方に感謝の意を述べたいと思います。
また、これから二日間、議論に寄与してくださる経験豊かなスピーカーの皆様に心から感謝を申し上げます。
最も重要なことして、私はグローバル・ユース・サミットの全ての参加者の皆様に感謝したいと思います。皆様の時間とエネルギーを使い、皆様がここに参加し、今日私たちの世界が直面している重大な問題に対処しようとしているという事実は、私たちがより素晴らしい未来を築いていくために絶対的に必要な人間性を皆様がお持ちであるということを示しています。簡単に言えば、皆様がここに参加されているのは、皆様はなにかポジティブな変化をもたらしたいと願っているからであり、より大きな善の実現のために行動しようとされているからに他ならないと私は信じています。
このグローバル・ユース・サミット2020は、国連の世界的な活動を記念する国連75周年の一環で取り組まれているUN75での議論と軌を一にしているということは非常に意味のあることです。そこから考えてみたときに、参加者の皆様方は、教育を改革したり、健康に投資したり、不平等による分断の問題に対して橋渡しをする役割を果たしたり、デジタル技術をはじめとする新しい技術を最大限に活用したり、環境資源や自然資源を保護したりするというような重大な問題に対して対処していこうと決意されたということになります。私は、このフォーラムで話し合われる議論は情報が豊富で、実用的で、そして行動可能なものになると確信します。
私は最初に、リーダーシップに関していくつか私の考えを共有させていただきたいと思います。特に、今回の「道徳的かつ革新的リーダーシップを通した、青年による未来の形成」というテーマに関してお話ししたいと思います。
ご存じのように、今日、世界は劇的に変化する新しい環境の中に置かれています。前例のないCOVID-19パンデミックは世界中を席捲しており、その影響は社会的・経済的あるいは地政学的な意味において、はるか遠くまで及ぶ可能性があります。そのような変化がもたらす挑戦に対しておじけついてしまいそうになる側面もありますが、同時に重大な新しい機会が開かれていく可能性もあります。
どのような問題に対して取り組むにしても、リーダーシップが成功にとって最も重要な要素です。このサミットで提示される個別の問題について対処しようとする前に、リーダーシップが持つ重要な側面についてより広い観点で考えることは非常に価値があることです。
技術の進歩とグローバリゼーションの動きは、世界中の人々の生活に影響を与え、息を飲むようなスピードで変化をもたらしています。私たちは今や、かっては考えられなかったような簡単な方法で、お互いとコミュニケーションを交わしたり、取引したり、移動したりできます。インターネットはかつては「ワールド・ワイド・ウェブ」と呼ばれていましたが、1990年に初めて導入されました。今からたった30年前の話です。そして、今日46億人の人々がインターネットのアクティブ・ユーザーであり、インターネットは私たちが日常行うことの多くに取り込まれています。
Googleは25年前には存在しませんでしたが、Googleは1秒間に70,000もの検索をさばいており、年間で2.2兆もの検索を処理しています。スティーブ・ジョブズが最初のiPhoneをリリースしたのは2007年でしたが、今やスマートフォンはいたるところに存在します。世界中で現在100億以上のモバイル機器が使用されており、これは世界の総人口をはるかに超えている数字です。革新とテクノロージーが人間の営みのほぼすべてのエリアにおいて、注目に値する飛躍的進歩をもたらしています。
このように今の時代は非常に素晴らしい兆候も見られる一方で、私たちは全ての大陸において悲惨な現実と直面し続けているのも事実です。
2~3の例について考えてみましょう。
世界経済フォーラムの見積もりによれば、腐敗による世界的な損失は毎年2.6兆円にものぼります。
NGOのチルドレン・インターナショナルによれば、3億8,500万ものこどもたちが極端な貧困の中で生活しています。さらに24億の人々がトイレや仮設トイレのような基本的な下水処理サービスも受けられない環境に暮らしています。
国連難民機関は、2019年末の時点で世界中で7,950万もの人々が住むところがなくなっていると報告しています。それは全人類の1%もの人々が対立や迫害のために自分たちの母国から離れ逃げなければならない状況にあることを意味します。
人類は非常に多くの領域において目を見張るような進歩を遂げているにもかかわらず、なぜ私たちは貧困や対立、腐敗といった問題は解決困難な問題だとして解決できないでいるのでしょうか? 私は、私たちの最も緊急の課題は倫理的なものであると信じています。私たちの現在の技術は私たちのインターネットのブラウジングの嗜好に対する巨大なデータを集めることはできますが、私たちがお互いを理解し合ったりお互いを尊敬しあったり、お互いを許し合うように手助けすることができないでいます。オマール・ブラッドリー大将は、数年前に下記のように語られて、私たちが直面しているこのジレンマを的確に表現されています。
「私たちは核の世界では巨人だが倫理的には幼児であるという世界にいきています。私たちは平和について知っていることよりも戦争についてたくさん知っており、生きることについてよりも殺し合うことについてより知っています。私たちは原子核の正体は理解しましたが、(イエス様の)山上の垂訓は拒否しました」
私たちの外的な発展と私たちの倫理的な成熟度の間には重大なギャップがあります。技術そのものは中立の価値です。技術は全人類の生活や福祉を向上させるために使用されることもできますが、一方で大量破壊兵器を作り出すために使用されることもできます。私たちには倫理的なリーダーシップ、すなわち道徳的権威を持ったリーダーシップが絶対的に必要です。それなくしては、私たちが21世紀の明るい未来を築いていく試みは著しく阻害されていくことになるでしょう。
20世紀において大変革をもたらしたリーダーたち―ガンディー、マルチン・ルーサー・キング、マンデラ―は、そのような道徳的な権威を持った人々でした。価値の重要性について、マルチン・ルーサー・キング・ジュニア博士は、「これが道徳的な宇宙であり、我々は物理の法則に従って生きているように宇宙には道徳的な法則も存在する」と語りました。
では、私たちが「道徳的かつ革新的リーダーシップ」という時、何を意味しているのでしょうか? グローバル・ピース・ファウンデーションでは、このユニークな言葉の組み合わせ、即ち―道徳的かつ革新的なリーダーシップ―これこそが我々が生きる時代に必要とされるリーダーシップの本質を要約していると信じています。道徳的リーダーを導くものは、普遍的な原理や共有された価値に根差した倫理的なフレームワークです。道徳的なリーダーには誠実さがあり、自己の利益よりも全体の善を推進することに尽力します。この「道徳的かつ革新的なリーダーシップ」のフレームワークを2010年に最初に世に発表されたGPFの議長であるヒョンジン・プレストン・ムン博士の言葉を引用します。
「道徳的リーダーシップは一国の未来にとって金(ゴールド)やダイアモンドや石油よりも貴重です。それは、最も根本的な人間の熱望を反映したものであり、人間の一生を支配する普遍的霊的原理にしたがう共通のビジョンによって導かれるものです。また、究極的には世界倫理ともいえる共通の道徳的価値の中に表されるものです」
しっかりとした倫理的フレームワークがあってこそ、革新的なリーダーシップというものは人間に内在する創造性や創意工夫性の源泉を最大限に生かすことが可能になりますし、その時はじめて革新性というパワーをさまざまな最も難しい社会問題にさえ対処可能なよう応用させていくことが可能になります。
2019年の国連の推計によりますと、世界には15歳から24歳の人々が12億人います。これは地球上の人々の6人に1人になります。2015年のデータですが、世界的に見ると29.6歳が中央値(メジアン)でした。つまり世界人口の半分以上が30歳以下です。
ですから単に数だけを見ても、青年たちは未来を形作る鍵と言えます。
青年や若い人々が大きな影響を与えた事例は歴史に数えきれないほど残されています。モーツアルトは8歳で最初の交響曲を作曲しました。アメリカの建国の父アレクサンダー・ハミルトンは、22歳でジョージ・ワシントンのトップの側近でしたし、30歳でアメリカ合衆国憲法を制定するのに主要な役割を果たしました。アルバート・アインシュタインが相対性理論という革命的な理論を世に発表したのはわずか26歳の時でした。
たしかに、今日の注目に値する技術やコミュニケーション・ツールを活用することで、若いリーダーたちが重大なインパクトをもたらす可能性は巨大です。このような技術ツールを使って情報やアイデアを広くそして急速に広げていきながら、道徳的で革新的なリーダーは、人類社会をよりよくしていく上で、広範囲にわたって意味のある貢献をしていくことでしょう。私は皆様が既にこのような例を多くご存じであると確信していますが、一例だけ紹介させてください。
マララ・ユスフザイさんが母国のパキスタンで女性教育の推進者になったのは12歳の時でした。彼女は15歳の時に、彼女が人権活動をしていることに対する反対勢力から、暗殺されそうになったことがありました。17歳で、マララさんはノーベル平和賞の最も若い受賞者になりました。今日、彼女の掲げる大義は世界的運動に発展しました。
では、私たちをしてそのように動かし、動機付けさせるものというのはどこに存在するのでしょうか? 私は世の中に変化をもたらすことができる、と信じているからではないでしょうか? 私たちは問題を修復し、間違いをただし、不正を終わらせることができるという確信からではないのでしょうか? 私たちがともに頑張れば、貧困を終わらせ、対立を解決し、持続可能な発展の目標を達成できると自信があるからではないですか?
私はそのキーは、私たちの人間としての本質的アイデンティティの中にあると思います。つまり、私たちが家族であるという共通の経験です。
全ての人々は―人種や宗教、民族性あるいはライフステージに関わらず―共通のエッセンスや品性を共有しています。すなわち、私たちが持つ「人間性」とは、私たちの最も顕著な外的な違いをも超越したものです。私たちはみな人類一家族の一員です。私たちは一つの家庭です。なぜなら私たちは共通の起源である創造主・神様を共有しているからです。したがって、私たちグローバル・ピース・ファウンデーションでは、持続的な平和の世界を築いていくという私たちの共通の取り組みを鼓舞するビジョンは、シンプルだけれどもパワフルなビジョン「神様の下の一家族(ワン・ファミリー・アンダー・ゴッド)」であると信じています。
私たち人類を規定するエッセンスとは、個々人で考えても、あるいは集合的に考えても、―あるいは人生そのもののエッセンスであっても―本質的に、霊的なものであると言えるでしょう。私たちは自然と、また直観的に、全ての人に価値があると認識しています。こうした理由で、私たちはたった一人の命さえも救うために多大な努力をします。私たちの人間としての価値は、創造主によって私たちの中に植えられています。それは、普遍的な霊的真理であり、一宗教の主張や教義ではないと私は信じてやみません。
そのような内的な霊性こそがダライ・ラマが我々の中にある「人道主義的な」性質と呼ぶものでしょう。それは国連のコフィー・アナン事務局長の次の言葉に反映されています。「21世においては、国連の使命は、人種や宗教に関わらず、全ての人間の生活の中に現れる人間の神聖さや尊厳性をより深く自覚して新しい意識を持つことから始まるだろう」
政治的、経済的、軍事的パワー以上に、我々の世界を変革することができる力は人間の霊性の力です。偉大なことを熱望させるのも人間の霊性ですし、どんなに重大な障害があったとしてもそれを克服しようとして、私たちの人格という高貴な本質を奮い起こすのも人間の霊性(スピリチュアリティ)です。
もし皆さんが道徳的で革新的なリーダーシップというフレームワークを採用するなら、変革のために皆さんの創造性の扉を開花させる際に、倫理的コンパスによって方向性を導いていくという選択をされたことを意味します。そして、そうであってこそ皆さん方は愛と誠実さを持ったリーダーとなることができ、個人的な創意工夫や集団での創意工夫を凝らしながら、課題に直面する私たちの世界に対して革新的な解決策を打ち出していくことができるようになります。
私は心から、このグローバル・ユース・サミット2020が皆さんにとって意味のある経験、刺激に満ちた経験、ためになる経験になることを期待しています。この世界青年サミットが皆さん方をより大きな善に誘い、対立や腐敗のない世界、貧困や病気のない世界を築き、世界の人類家族の一人ひとりのために機会と幸福に満ちた世界を築いていくという、壮大な夢を抱き、壮大に活動していく契機になりますことを願っています。
ご清聴ありがとうございました。
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