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ヴラジミール・ソモブさん回顧録3 「バラバラの世界」2020.11.25 | 

元の記事はコチラより。

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 私の旅をふり返ってみると、私は、私たちが住む世界には重大な違いがあることに気づくようになりました。

 ほとんど全ての商品やサービスは北朝鮮の国民には制限されています。テレビのチャンネルはたった5つしかありませんし、その全ては政府に監視されています。北朝鮮の軍隊や金正恩、この国の「偉大さ」について国家的プロパガンダを放送するためです。
 私は、旧ソ連と同じように北朝鮮の市民も自分のアパートや家を購入できないことを学びました。大学を卒業して、軍隊に入って、結婚した後、市民たちは「待機リスト」に加えられます。それから、数か月から2・3年後に、彼らはアパートを割り当てられます。
 それまでの間(自分たちの場所が来るまで)は、若い人々や新しく結婚したカップルは自分たちの両親と住みます(夫婦の場合は夫の両親のところに住みます)。車は、それまでの間は普通の人々には手の届かないものです。北朝鮮で車を入手できる唯一の方法は、政府によって支給された場合です。そのような環境では、人々は車を中古で売ることも許されず、自分の親族のみに譲ることができるだけです。

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膝が見える服を着てドレス・シューズを履く北朝鮮の女性
写真提供:ヴラジミール・ソモブさん

 ドレスコードも統一されたものでした。私が見た人々は、1950年代か60年代のファッションに似た感じの服装でした。女性たちは単調な装いで、単調なヒールを履いていて、男性はぱっとしない色のシャツやズボン、ドレス・シューズという装いです。

 私のガイドは私を特別なお店に連れていきました。そこでは、外国の商品を売っていて、北朝鮮の外で作られた靴も置いてあったのですが、古臭い感じのものでした。全ての価格は米ドルで表示されていましたし、価格は西洋の価格とよく似た感じでした。結果的に、外国の通貨を手にすることができる北朝鮮のごく一部の人だけがその店で売られている商品を購入することができます。

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北朝鮮で火鍋を食べるヴラジミール・ソモブさん
写真提供:ヴラジミール・ソモブさん

 もしかすると、最も特筆すべきことは、私のような外国人が利用可能な食べ物はたくさんあったということでした。レストランでは朝鮮のホットポットを食べることができましたし、その他の選択肢としては、伝統的な朝鮮の冷麺である「ネンミョン」を食べることもできました。外国人旅行者には、全ての食事は決まったメニューで、前払いです。
 私は予期しないことに北朝鮮で体重が増えてしまったのですが、2019年に国連機関が発表したところに依れば、北朝鮮は深刻な食糧不足をもともと経験しており、そこに来てさらに、この10年間の中で最悪レベルの収穫量だったことによってその状況が悪化しており、全人口の40%にも影響しているということを聞いて知っていたので、それとは対照的だと思わざるを得ませんでした。

―帰国
 北朝鮮に行くために北京からワシントンへ行く飛行機の便の中で、デルタ航空は飛行機の中で見ることができるエンターテイメントで見たコマーシャルを上映していたのですが、それが、今回の私の訪問の後、しばらくして、感慨深いなとあらためて思わされました。
 そのコマーシャルでは、「私たちが生まれた時、私たちはお互いに違っているというよりはよく似た状態で生まれてきます。しかし、大きくなるに連れて、お互いに遠く離れれば離れるほど私たちも違っていると考えてしまいます」と始まり、さらに「あなたがたが冒険に出る時、私たちがお互いに共有しているもの全てを発見することができます。飛行機の旅は私たちを一つにし、実際はそれほど遠く離れていないのだということを示してくれる手助けをするものです」と続きました。

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北朝鮮の実情を理解しようと話を聞くソモブさん
(写真提供:ヴラジミール・ソモブさん)

 私の北朝鮮への旅はまさしく、それでした。新聞の大見出しに書かれているようなものを飛び越えて理解する機会でした。北朝鮮の普通の市民たちは、全く異なる政治システムの中で、私たちの持っているものとは異なるさまざまな規制や現実の中で暮らしているのは事実ですが、彼らは見かけ以上に私たちとよく似ています。

 基本的に、私たちはみな、生きるために悩みます。その実際の要因は違うかもしれませんが、生存が問題になっているという点は似ています。非現実的でない現実にさらされていくことにより、北朝鮮の人々が、何百万もの東ヨーロッパの人々が比較的最近の30年前に大移動したのと同じような移動をするかもしれません。誰も無いとは言い切れません。

 私の両親もその東ヨーロッパにおける大移動の時に移動したのですが、そのようなことが起これば、北朝鮮の人々はもっと私たちと似たものとなっていくことでしょう。私が言いたいのは、たった数十年前ですがアメリカ人の平均的な人々は「ロシア人は敵だ」と思っていましたが、そのような一般化は、実際のロシア人たちを前にはもはや成り立たないというふうに、今ではなっています。それは巨大な変化でした。

 北朝鮮はアメリカ合衆国の80分の1ほどの大きさです。にもかかわらず、北朝鮮の存在はアメリカ(とその他の世界)にとって重要です。私たちは地球という一つの惑星を共有しており、一つの国が行うことは他の国にも影響を与えます。しかも、決して小さくない形で、です。お互いに対して感情移入する理由が特に他にないなら、その事実の認識だけでも理由として十分です。
 政治的、イデオロギー的な違いがあまりにも大きいので、そのような違いを超越していく唯一の方法は、一人の人間同士のレベルでつながることしかありません。私たちが今いるところは、お互いに対して行き詰まりを見せています。感情移入が一つのチャンスを私たちに与えてくれます。感情移入をしていくための最短の近道は、人間的な交渉だったり相互作用を通してです。いかに厳格に統制されている人々に対してであっても、です。自分が知っている人を憎むことは、自分が何も知らない人を憎むことより難しいことです。

 私が皆さんにお伝えしたいことは、北朝鮮やそこに住む人々について学習したり学んだりしていけば、私たちが持続的な平和を築いていく道に一歩近づく上で助けになっていくことに間違いないということです。

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