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「現代社会における自然体験の価値」オンラインセミナーを開催しました2021.02.25 | 

 2月21日の午後1時より、立教大学名誉教授の濁川孝志先生をお招きし、「現代社会における自然体験の価値」というテーマで講演をいただきました。
 元々、大学で教鞭を取られる傍ら、アウトドアアクティビティをこよなく愛し、自然を通した授業を行っておられました。
また、写真家であり探検家である星野道夫さんの大ファンでもあり、星野道夫さんの文章をいくつか引用しながら、その価値観や思想が現代社会でどのように生きてくるのか、講演をいただきました。

 多くの内容から、いくつかの点を抜粋します。
 当日の内容は、下記のYouTubeにもありますので、ぜひご覧ください。

―自然について、いろいろな気づきをもたらしてくれる言葉
■探検家の高野たか子さん(ガイアシンフォニーの出演者)がかつて北極を探検し、先住民の古老と話した際に言われた言葉に次のような言葉がある「人間として大切なものはどうやったら身につくのか?」という高野さんの問いに「そんなものは、自然が全て教えてくれる!」という古老の言葉。この言葉に非常に同意する。
■ご自身のアウトドア体験で、ユーコン川という3,000km以上の原始の川を300kmほどカヌーで渡った時の話を回想。ユーコン川の水の透明度は抜群に高く、3mくらい下の底が、30cmくらい下に見える。
■ムース、カリブーなどの自然動物が多くいる川をカヌーで川下りいろんな自然を体験する中で、自然とは、「美しく、寡黙で、厳しく、時に暖かく、優しい」存在だと気づく。そのような存在が実際にいたら、人間もいろんなことを学ぶことができる。

―コンフリクトをもたらす要因
■コンフリクト、ということに目を向けると、その要因に、個々が別々に存在するという分離意識がある。それは、自分と他人が全く違う世界に生きている、という価値観。
■「過剰な」西洋的な「所有の価値観」すなわち、自分が独占して持たなければならない、という価値観が加速されている。
■人間中心主義的な価値観が、生態系の破壊や異常気象を招いている。
■結局、それらは人間を幸せに導かない。
■分離意識の解消するためにートランスパーソナル(trans-personal。個人的、個体的なものを超えた)な価値観、が大切。
■では、それをどのように培うことができるか。

―「霊性」の重要性
■「霊性」を培っていくことが重要。
■従来から使われてきた宗教という言葉から、その組織や制度としての側面、拘束的、排他的、多くの宗教が説明している、宇宙の成り立ち、超越的存在(神)との繋がり、生きる上での規範、などの共通部分を要約したもので、同時に宗教が持つ負の側面、すなわち他の宗教を否定したり、独自の観念体系や教義を強要したり、という拘束的な部分を取り除いたものを霊性という。
(『星野道夫の神話』より)
■スピリチュアリティ、他者への眼差しを身につけること。日々の出来事に対して、感謝の気持ちを持って対処できるようになる。自分以外の生命のことを、本気で考え、行動し、祈ることができるようになる。遠い未来を思い、遥かな過去を感じる力も増してくる。それが、結局、自分自身をも幸せにする。
■では、その霊性はどのように培うことができるのか。「宗教」「スピリチュアリティ教育」「行(瞑想、気功、ヨガ、など)」そして、「自然体験」の4つ。
■人間の手がついていない、アーティフィシャルなものではない自然での、目的の有無を問わない体験。それが自然体験。
■現代社会に自然体験が必要な理由。専門化され、細分化され、断片化され、単純化た生活の中で、想定外の事態が起きた時に、対応できない!自然体験は、それ自体が全体的、ホリスティックな体験である。

―星野道夫さんの思想や価値観から学ぶ
■アラスカの大自然の中で暮らしながら、感性、価値観を培った星野道夫さん。
■霊性に根ざした多様性と共生の価値観を持っていた。そのような価値観が培われれば、統合、調和の方向に社会が導かれていく、と思う。
■星野さんはまた、すごく寡黙な人であった。すごい透明感のある文章を書く人だった一方で、何か人に教えよう、という感じではない。
■星野道夫さんの精神性を分析したところ、6つの因子に分類することができる。万物のつながり、自然との調和、古い知恵の継承。輪廻、年長者への敬意、目に見えない存在。そのような価値観に根ざしていれば、分断や紛争は軽減されるのでは。

 そして、星野道夫氏の文章をスクリーンに出しながら、それぞれのスピードで読み進め、情景を思い浮かべながら、その世界に浸りました。

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星野道夫さんの写真を紹介しながら、彼の価値観について語る濁川先生

 いくつか引用された星野道夫さんの言葉の中から、一部を紹介します。
(■に続く文章は濁川先生のコメント)
「毎晩のようにオオカミの遠吠えを聞いた。一つの群れがいくつかのグループに離ればなれになったのだろうか。遠吠えはお互いの位置を確かめ合うように、それぞれのグループのオオカミが掛け合うように始まり最後はきまって合唱になった。
 その遠吠えはしみわたるような余韻を残して、初冬の山々に響きわたった。子どもの頃に読んだ物語の世界が実現したよろこびにひたっていたのである。
 私には銃もなく、たったひとりだったが、なんの恐れもなかった。それほどまでに、オオカミの遠吠えは、まわりのすべての自然と調和して、神秘的なハーモニーとして聞えていたのだ」
『グリズリー From Autumn to Winter:星野道夫著作集1巻p250』

■本当に調和の取れた世界には、怖い、といった感情を超越している。ハーモニーは、音階が違うからできる。美しいものは、多様なものから作られている。みんなが同じになったら面白くないし、美しくない。

「『その土地に深く関わった霊的なものを、彼らは無意味な場所に持ち去ってまでしてなぜ保存しようとするのか。私たちは、いつの日かトーテムポールが朽ち果て、そこに森が押し寄せてきて、すべてのものが自然の中に消えてしまっていいと思っているのだ。なぜそのことがわからないのか』
 その話を聞きながら、目に見えるものに価値を置く社会と、見えないものに価値を置くことができる社会の違いを僕は思った。
 そしてたまらなく後者の思想に魅かれるのだった。夜の闇の中で、姿の見えぬ生命の気配が、より根源的であるように」
『森と氷河と鯨:星野道夫著作集4巻p26』

■西洋人の発想:貴重な文化財を、博物館で陳列し、何百年後世にこの文化財を残したい、「博物館」の発想。先住民族の発想:木でできたトーテムポールは、このまま自然の中で朽ち果てていく、そのことが重要なのだ、という価値観。
「所有」と「輪廻・譲渡」の文化の違い。現代は、西洋的な「所有」の価値観が強すぎるのではないか。バランスが大切。

 他にも多くの素敵な文章が引用されました。
 続きはぜひ、YouTubeよりご覧ください。

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