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オンラインセミナー「国際社会はミャンマーの人々を見捨てるのか」を実施しました2021.06.25 | 

6月19日午後7時(日本時間)より、NPO法人インターバンド 理事 阪口直人氏をお招きし、「国際社会はミャンマーの人々を見捨てるのか ~紛争仲介力を生み出す市民の力~」というテーマでご講演をいただきました。
当日の動画は以下からご覧いただけます。

最初に「ミャンマーの現状について理解を深める」「人々が直面する危機に対してアクションを起こすこと」を今回の講演のテーマとすると呼びかけがあり、ウェビナーが始まりました。多くの内容から、要点を抜粋します。

―はじめに
◼️講演日であった6月19日は実はアンサンスーチー氏の誕生日。客観的な評論家的な立場として話をするのではなく、これまで様々な形で平和構築、支援に取り組んできて、ミャンマーの民主主義を回復するための力になりたい思いでの講演。
◼️ミャンマーの人々はこの間、国際社会に対してなんとか支援を行ってもらいたいと考えている。しかし、国際社会がそれに答えられていない。この状況をなんとかして打開したい。
◼️これまで様々な民主化運動、民主的な選挙の実施に関わってきたが、ミャンマーの方々の運動はモラルが非常に高い。それに対して軍が残虐な行為を繰り広げている。

―このような活動を始められた原点は?
◼️1992年に当時勤めていたキヤノン株式会社を辞めて参加した国連の選挙ボランティアが原点。内戦が続いていたカンボジアで自由公正な選挙の仕組みが行われるよう支援を行う。その後、日本政府の一員としてモザンビークでの選挙活動支援も行う。

カンボジアでは選挙を知らない山岳民族の村に滞在し、支援を行った

◼️2009年に衆議院議員に当選し、ミャンマーの民主化を支援する議員連盟の事務局長も務める。

ミャンマーの民主化のため、アウンサンスーチー氏にも直接会って働きかけた

―ミャンマーに対して強い思いを持つようになったのは
◼️これまで70カ国以上を旅してきて「どこの国の人が一番親切ですか」と聞かれる。その時に真っ先に浮かぶのがミャンマーの人のこと。接点ができて次の日に帰ろうとすると村人が総出でお見送りをしてくれるのは思い出のエピソード。
◼️叔父がインパール作戦に参加。ミャンマーで命からがらさまよっていた際に、現地の方々には救われ助けてもらった話を子どもの頃からよく聞いていた。
◼️ミャンマーになんとか関わりたいと思う中で1995年から現地の盲学校を支援する基金を作り、度々現地に行って活動していた。その時に、軟禁状態にあったスーチー氏と自宅前で対話集会に参加。その際、インドのマハトマガンジーの非暴力・不服従運動に言及し、「忍耐強さとしてより高いモラルで自由と民主主義を勝ち取りましょう」と熱心に聴衆に語りかけていた。

スーチー氏の自宅前の対話集会での写真。スーチー氏も気に入っているという一枚

―現在ミャンマーでの国軍のクーデターに対して
◼️自分はこのクーデターを認める立場では全くない。2015年のミャンマーの総選挙に議員連盟の一員として参加した際、自由公正な基盤が選挙に必要ということを実感。
◼️公正ではない理由の一つに、ロヒンギャの方々をはじめとする一部の人が有権者としても候補者としても選挙に参加できない差別的な法律である。また、軍が占拠で争われる議席とは別に全体の25%を保有している(軍人には自動的に議席が与えられる)そして、憲法改正には3/4の賛成が必要という公正ではない状況。
◼️2015年の総選挙へ参加の際、様々な不正が多方面から我々のところに報告されたが、多くが手付かずのまま選挙になった。亡くなった方など既に投票の権利を持ってない人たちが有権者登録される例もあった。当時の軍事政権がこのような選挙基盤を作っていた。

現地の選挙スタッフの方々が遅くまで開票作業を行っていた。十分な選挙教育がされているとはいえない状況であった

―ミャンマーで行われた主な選挙結果の流れ
◼️1990年総選挙: 民主化リーダーのアウンサンスーチー氏が自宅軟禁の状況下、NLD(国民民主連盟)が492議席中392議席を獲得したが、軍事政権は居座り、軍事独裁継続へ。2012年の補欠選挙ではNLDが下院37議席のうち35議席、上院6議席のうち3議席獲得。アウンサンスーチー氏が当選。
◼️2015年総選挙 NLDが491議席中390議席を獲得。軍出身のテイン・セイン大統領の与党・連邦団結発展党(USDP)は330議席→41議席
◼️2020年総選挙 NLDが476議席中396議席、連邦団結発展党は33議席。ヤカイン民族党が22議席、シャン民族民主連盟が15議席獲得。
◼️現地で選挙を監視した方々の話では、軍事政権の政党に入れた方は数十人、900人以上はNLDへ投票。まさに圧勝状態であった。

―モラルの高さが際立つ市民不服従運動(CDM)と残虐な弾圧
◼️2020年のミャンマーの総選挙の際、ミャンマー市民が抵抗。モラルの高い素晴らしい抵抗運動で、多くの方々が職場を放棄して参加していた。
◼️国際社会に対して主張を伝えるため、プラカードを英語で作成。その規律の高さは2022年のノーベル平和賞にもノミネートされている。そのデモに対して治安部隊による殺戮(850名以上)と、6000人以上の逮捕・拘束が行われている。

デモに参加し、負傷した市民の救助にあたる市民

阪口氏自身も名古屋におけるデモ活動に参加し、ミャンマーの実情を訴えた

―国軍に対抗する動きとして
◼️ミャンマー連邦議会の議員有志が臨時政府として連邦議会代表委員会(CRPH)が2月5日に設立。その後、CRPHは4月16日に国民統一政府(NUG)の樹立を宣言。ウィン・ミン大統領とアウン・サン・スー・チー国家顧問は留任。

―これに対する他国(主に西側)の動きは
◼️中国を利することを恐れ民主主義陣営がなかなか有効な手を打てず。アメリカの政府通商代表部はミャンマーとアメリカの通称停止を発表。
EUはミャンマー国軍によるクーデター関係者に対しEUへの渡航禁止及び資産凍結などの制裁を実施。
◼️日本は「独自のパイプをどのように生かすか検討中」という状況が続く。国軍に最も影響力を持つ中国は静観。国軍はロシアとの関係を強化。
◼️一方で、ミャンマーの市民からは、「平和への貢献」「戦略的歩パートナー」として日本に大きく期待している。

―国軍の実情と他国との関係の構造
◼️建国の英雄、アウンサン将軍が創設。現在約50万人もの兵力を持つ巨大組織。
最大の経済力を持つ財閥集団であり、国内最大の地主。ビジネスをミャンマーとする際、直接間接に国軍との関係が生じる構造がある。
◼️4月24日にASEAN首脳級会議が開催され、市民を標的にした武力行使の即時停止、国民の利益を最優先とし平和的な解決のため話し合いを行う、など5項目が合意された。しかし、全会一致の原則に縛られ、合意項目に盛り込まれなかった人権問題もある。

―ロヒンギャ問題へのアウンサンスーチー国家顧問の対応は?
◼️ミャンマー政府が不法移民とみなしてきたロヒンギャに対して軍が攻撃をして100万人もの難民が発生。この解決に向けて積極的ではないということで、アウンサンスーチー氏の平和賞受賞者としての国際社会の評価や信頼が失墜。
◼️2016年8月、アウンサンスー・チー国家顧問は自身が主導して、ラカイン問題調査委員会(コフィ・アナン元国連事務総長がトップ)を発足。国際社会に開かれた形でロヒンギャ問題の解決に向けた提案を行うための調査を一年間にわたって実施。
◼️ラカイン州とバングラデシュの双方を調査し、2017年8月24日に提言を公表。第三者による投信によって軍の決定的な反発を通じ、反ロヒンギャ感情が強い国民を納得させる戦略だったのではないか(阪口氏見解)。

―高まる内戦拡大の危機と国民の期待
◼️NUGが「国民防衛隊(PDF)」を創設している。また、少数民族武装組織に人口のビルマ軍(ビルマ族は国民の7割を占める)が入って連邦軍を組織し、国軍の中にいる正義のために戦いたい国民の為に戦いたいと思う兵士や幹部に働きかけて内部から変える。その動きに国民は期待している。
◼️この連邦軍は内戦のためではなく軍人を受けるための組織という位置付けにある。命を投げ打って離脱した全ての国軍兵士と警察官を、国民統一政府は「国民の腹心の友である英雄戦士」として温かく歓迎する準備をしている。

―デモがモデルとするキューバ革命のモラルの高さ
◼️今回のミャンマーのデモは、キューバ革命のモラルの高さをモデルとしている。略奪をしない、住民を教育。学校、ラジオ局、新聞を作り志を伝える、農作業などの手伝いをする、貧しい農民への医療活動、そして、傷ついた政府軍兵士も治療する、といった戦略をモデルとしてデモを行っている。
◼️一方で、スーチー氏は、武力闘争を否定はしていない。武力闘争の方が成功の可能性が高いときにはそちらを選択することを否定していない。

―日本が貢献できる道とは?紛争仲介外交の可能性
◼️紛争の仲介(mediation)とは
①当事者に代わって交渉する
②当事者に代わって交渉が成立する環境を作る
こと。
◼️日本政府としてできることは国際刑事裁判所や国際司法裁判所への提訴
離脱した兵士や警察官、公務員などへの支援も環境を作るために重要。また、国軍とNUGの交渉成立のために、双方の力関係を近づけなければいけない。そのために、各国にNUGを承認させる働きかけも可能。

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