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オンラインセミナー「韓国大統領選挙と日韓関係」を実施しました2022.02.07 |
1月30日(日)の19時より、東アジア総合研究所理事長の姜英之氏をお招きし、「韓国大統領選挙と日韓関係」をテーマにオンラインセミナーを開催。70名強が参加をしました。
3月に迫った韓国大統領選挙の展望と、日韓関係への影響を要点をまとめてお話いただきました。要点を以下に抜粋します。
―韓国大統領選挙に対する日韓の関心
■次期大統領を選ぶことについて、「もどかしい、やりきれない」という気持ちが国民の中にある。それは、日本のマスコミでも報道されているように、与野党陣営で政策論争が全くなく、相手のスキャンダルをお互いに批判し合う状況が続いているためで、国民の熱も冷めている状況にある。
■一方で、歴史的に見て意義がある選挙でもある。いずれが勝っても、それぞれの政権が20年続くと言われており、韓国政治の構造を左右する負けられない一戦、いわば関ヶ原の戦いでもある。
―選挙の性格
■韓国社会のある世論調査によると、政権交代を望む声が47.6%、政権の再創出・維持が40.8%である。一概には言えないが、各種世論調査を見ても政権交代を望む声が大きい。このことは韓国の国民意識を反映しているのはないか。
■文在寅政権に対する肯定的評価より否定的評価が大きいのではないか。経済的にも7大強大国にもなった。経済での成長を誇示しているが、現実はどうだったのか。
■朴槿恵前大統領は、「不通」大統領と言われ、政治の場で何が行われているかわからない状況があった。文政権下では、そのような密封政治は克服されたが、独裁政権の中で検察権力が言いなりになり、検察権力に対する批判的な声が聴かれるようになった。
■そのような中で出てきた尹錫悦(ユン・ソギョル)候補は、朴槿恵大統領を牢獄に追い込んだ張本人であり、最大の側近の曺国法務大臣も娘の不正入試の問題などで追求。文政権に対しては国民から民主的人事に対する圧迫ということで、批判の声が上がっていた。
■70年代以降、学生運動にも大きな影響を与えた、崔章集(チェ・チャンジプ)高麗大学名誉教授によれば、文在寅政権になって左右の対立が深まり、民主主義が後退した、との評価。ろうそくデモなど、革命的に社会を変えるという思考があったのではないか。
■与党の李在明陣営では、城南市長時代のテジャン洞地域の大規模不動産開発をめぐる不正行為に民主党の国会議員が数十名絡んでいたという、現政権が信用を失うかなり大きな要因となっている。
■3年前の地方選挙では、文在寅政権への指示というよりは、野党への不信より与党に票が集まった側面が大きく、今回の選挙で大きい要因は、文在寅政権が若者からの支持を失ったという点。要因として、OECD加盟国の中で、3年連続自殺率が1位。若者が結婚ができない、住宅も持てない。かつて韓国の独裁軍事政権への反対をしていた層が、韓国の若い世代から総スカンを食らっている状況にある。
―大統領選挙の争点
■史上例のないネガティブキャンペーンに国民もうんざりしている状況。政策論争がなく、国家ビジョンが見えてこない。
■李在明候側の企業との贈収賄事件で、関係者の中には自殺者も出ている。国民も批判的にみている。それに対し李候補は、ひたすら謝り、赦しを乞う姿勢を見せている。また、国民に対するばらまき政策が目立ち、ポピュリズムの典型だと思わせる感も。
■野党の尹候補もひどい状況で、大統領候補質疑応答の際に、手のひらに「王」という字が書かれており、シャーマニズムの影響を受けていることへの国民の憂慮がある。また、原稿なしで喋ることができない。本人が自信を持って国政について語ることができない状況を見せている。また、党代表の李俊錫(イ・ジュンソク)氏との対立など、党内での対立もある。
■尹候補から、かつての反共保守政党から出てこないような発言が出ていたところを見て、それまでの反共保守から、合理的な保守への変化という側面に期待を持っていたが「滅共」発言や北朝鮮に対する先制攻撃論など、かつての固執的な保守政権に戻っている。これまでの革新陣営の動きを活用し、いかに北朝鮮を対話の場に出すことができるか、ということを考える必要がある。
―勝敗の行方
■第三の候補、安哲秀に注目が集まっているが、現実的には難しく、よほどのことがない限り、今後支持率が20%が30%まで上昇することはない。
■国民全体としても政権交代を臨む動きがあるが、昨年後半に入って尹候補の弱点が表面化。奥さんの経歴詐称問題。年末には選挙対策委員会も解散し、党の代表が背を向けてしまうなど、党内でさえ一つにまとめられないのは、政治能力としては不足しているのではないかという見方をしている。
■今後の選挙の変数として、野党の一本化と北朝鮮がどう出てくるか、という2つがある。国民の声、世論調査では野党の一本化を臨む声が大きいが、今のところ、尹候補から安候補に対して一本化を呼びかける動きもない。この国民意見は、1987年に韓国が間接選挙から直接選挙に切り替わった際、野党が一本化できずに、軍事政権が続いたことの経験から、そのような声が強い。
■また、北朝鮮の出方として、ここのところ7回目のミサイル打ち上げに対して、保守陣営に有利な状況が生まれている。これに対しては、「選挙干渉だ」として、李候補も北朝鮮を批判する状況。
―日韓関係への影響は
■ 歴史問題についても強く追求する姿勢を見せる李在明候補が勝てば、現文在寅政権と同じ、場合によってはそれよりも日韓関係がうまくいかない状況になる可能性がある。しかし、このことは政党を超えた国家的課題、電撃的に日本との関係改善の策を出すのはないとは言い切れない。
■尹候補が当選すれば日本との関係改善の余地がある。韓国の国民の声の中にも1965年時点での日韓合意を破棄するのは良くない、という意見が多くなってきている。日本政府のいうことに応じる韓国民の声が出てきている。その声をバックに歴史問題については追求しないというのが尹候補についてはやりやすい。しかし、全体的に反日世論がなくなったわけではなく、急に親日的になるのはすぐには取りにくいということが言える。
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