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オンラインセミナー「国際社会で重要な役割を担う日本にとって、朝鮮半島統一がもたらすインパクトとは?」を実施しました2022.05.01 | 

4月23日にアジア・インスティテュート理事長(本部:韓国)のエマニュエル・パストリッチ氏をお招きし、「国際社会で重要な役割を担う日本にとって、朝鮮半島統一がもたらすインパクトとは?」をテーマとしてオンラインセミナーを行いました。韓国で5年ぶりに政権交代が起こり、新政権下で5月10日から政権運営が始まりますが、東アジア、世界情勢が劇的に変化する中で、朝鮮半島の分断においても日本の果たす役割についてお聞きしました。

多くの内容の中から、要点を抜粋します。

―はじめに
■これまで、日本の国際社会における役割を考えてきた。アメリカの常識とは違う観点、一般的な観点とは違う観点から、個人の意見を申し上げたい。
■個人としては、日本と朝鮮半島や、日本と中国の歴史、文化を長く勉強した者として、今回の話が参考になればと感じる。

国際社会における日本の役割の重要性を強調するパストリッチ氏

―国際社会で重要な役割を担う日本
■技術、化学研究に屈指の実力を持っており、思想、伝統を持っている。一般市民の教育の水準も高く、国際社会で重要な役割を担うことが可能。
■一方で最近、日本は受動的にアメリカの主張に条件なしに従う風潮がある。これは主体性や精神的な問題でもある。

―本当の挑戦に準備する日本
■現実に存在する挑戦や危機に対して、日本は本当に準備をしているのか。アメリカや東京でもそうだが、常識に逆行する勇気があるのかどうか。それが最も大事な点である。
■元々古典文学や漢文を専攻しており、日本の歴史も勉強した。その中には、勇気を持って世の中を変える思想、哲学を持った人がいた。同じく、日本も抜本的な改革ができると期待をしている。
■環境、経済、金融、など数多くの問題があるが、その解決をリードできる国は現れていない。また、多くの政治家や公務員はこの危機にほとんど言及していないことが最も危ない点かもしれない。技術的発展は、人間の脳、魂まで影響を及ぼす状況がある。
■しかし、このような状況に関して、独立的な思考方式を持っておらず、非常に危険な状況である。西洋文明も崩壊しかけており、東洋文明を再評価する時期が来たと考える。

―新しい経済
■統一を考える際、経済を考える必要があるが、韓国や日本の大企業が金儲けの目的で北朝鮮の開発を考えると、統一の成功はあり得ない。北朝鮮からも反発があるだろうし、ヘタをすると却って深刻な貧富の格差が出る可能性が高い。統一政策を考える前に、経済とは何か、という根本的なことを考える必要がある。
■元々の経済の意味は、「経世済民」すなわち、社会を健全に経営して、民、市民を生かす、幸せにするのが元々の意味であった。18世紀の日本で貨幣制度以降は、経済を限られた意味で使い始めた。経済が道徳とは別物だという考え方が強くなっている。日本の伝統的思想に従えば、経済が短期的なものではなく、100-200年単位で考えるべきものである。このことは日本の数多くの思想家が考えており、私も重視したいと思う。
■ここ50年くらいは成長と消費を中心とした経済に対する思想がほとんど宗教のようなものになっている。このことについては化学的な証拠は一つもない。

―日本の平和憲法
■平和憲法がいいと主張する日本人が少なくなっている。非常にいい伝統であり、安全保障を抜本的に考え直す時期が来たと考える。
■朝鮮通信使の例ように、日本と韓国、隣国が何百年、互いに尊敬して、戦争にならない事例が多かった。ヨーロッパよりはるかにマシな状況であった。
気候変動を始め、それによる環境破壊などを考えると、安全保障を新しい観点で考え直すことが必要であり、そのためには日本の平和憲法が助けになると思う。

―新しい安保の定義
■では、新しい安全保障の定義であるが、これは深刻に考えるべきである。多様で、新しい危機が存在する中で、創造力を発揮して、新しい地球の安全を考えるべきである。そこには、伝統的な考え方が参考になる。日本が重要な役割を果たすことができれば、東アジアだけではなく、地球規模で影響があると考える。

―本当の安保について
■医療が短期的なお金を儲けるチャンスとなってしまっている。この分野も総合的な安保の一部である。また、日本の農業は安保の核心にある。国内で確保できないと非常に危ない立場にある。
■ウクライナ情勢のこともあるが、様々な情報が矛盾しているものが多い。情報における困難を解決するために、情報の憲法のようなものが必要である。ここにおいても日本は非常に重要な役割をすることができる。技術が我々の生活に建設的な役割ができるように新しい政策が絶対に必要である。

―精神的危機
■日本の危機は精神的な危機であり、それを解決するには独立した思考方式が必要。それは、日本の伝統に解決を見つけるしかない。まずは、日本とは何かを考える必要がある。素晴らしい伝統の中に色々な答えが見つけられる。

―日本の伝統の実践と朝鮮半島統一
■朝鮮半島統一については、いろんな重要な効果が考えられる。100〜500年に一度しか来ないような、建国の機会にもなる。非常に意味があり、そして、可能だと思う。歴史の法則に従えば、必ずそのようなチャンスがくるし、もし、朝鮮半島が統一されたら、東アジアの秩序の成立にもつながる。
■長期的には深く考える必要がある。日本の知識人が非常に重要な役割をできる。日本が新しい東アジアの秩序に貢献しようと思えばそれができる。そして、朝鮮半島の統一は新しい文明の転換にもなりうる。西洋的な、豊かに暮らしが成功だと考えるのではなく、東洋の思想を持って新しい世の中の基準を作るのが成功だと考える。それは今、できていない。
■冷戦による朝鮮半島の分断によって国連の役割も相当ゆがんでしまった。統一されれば、国連が果たさなければならない使命を実際に実現できるかもしれない。新しい世の中を作れる可能性がある。東アジアを中心として、武器と競争の世の中ではなく、市民を中心とした経済の社会を作って、健全な社会を作ることができることができると考える。新しい歴史を書く瞬間にもなるし、勇気が必要かもしれないが、この機会を捕まえて活用することを願う。

―日本とアメリカ
■日本にはアメリカに対して、客観的・冷静な態度が必要だと思う。アメリカは制度的な矛盾があり、稼働できない部分が多い。特に外交分野でそれがある。今のところ同盟国だが、永遠にそうであるかはわからず、日本人が積極的にアメリカの未来、日本の未来を考える必要がある。

―日本と中国
■中国と日本は地政学的に縁を切ってもきれない関係。中国を批判しても何のためにもならず、客観的、長期的、冷静に見るべきである。中国の技術力、核の力が無視できない増大しているが、中国についてよく知らない日本人が増えている。中国は嫌いであったとしても、相当詳しく知る必要がある。

―日本と統一朝鮮半島
■現状の不安定な地政学的状況を考えた時に、急な展開があると思う。
■突然の統一は考えられ得る。そうなった際、シナリオを考える必要がある。その場合において、日本が非常に立派な役割ができるかどうかが重要。日本が統一に貢献するためには、前もって準備しないとできない。新しい国の建設、新しい文化、東アジアの文明の再評価、きっかけになりうる。

―荻生徂徠の政談
■日本文化の持続可能な経済、環境、立派な伝統を蘇らせればといいと思う
■荻生徂徠は18世紀の哲学者であり、特に日本的な儒教の伝統の核心をいく人である。
■荻生徂徠について相当勉強、研究をした。『政談』にある言葉として、碁(チェス)をする方法の例え話があり、そこに書かれていることが2つある。一つは原則を完璧に理解すること。もう一つは自分で新しいルールを作ること。国際社会の秩序が流動的である今、制度を新しく作るチャンスが来たと思う。日本がこの時期において重要な貢献ができるといいと考える。そして、平和な秩序の条件は平和的な朝鮮半島統一であり、日本がうまくその過程に重要な役割を果たすことができれば、日本にもいいチャンスになると考える。

―質疑応答(回答については一部抜粋)
Q: 朝鮮半島が統一された時に、日本が受ける特筆すべき利益とは何でしょうか?
A: 短期的に日本の企業が北朝鮮で投資して儲けるのは日本の利益になると思わない。かえって反日感情、東アジアの貧富の格差を拡大させる恐れがある。精神的、長期的、持続可能な発展を考える必要がある。1940年代以降の歪んだ思想を乗り越えるいいチャンスになると思う。

Q: 日本が東アジア諸国の難しい関係を持つ中で、朝鮮半島の統一のプロセスを支援することは簡単ではないと考えますが、まず何をすべきで、何ができることだとお考えでしょうか?
A: 簡単ではない。朝鮮半島の将来を本格的、長期的、建設的に考えるには、国内の改革も必要。日本人と政府は、日本人のことも考えていないのが現状。国際関係を短期的な利益ではなく、市民の次元で考えることができたら、それは革命的な変化であり、日本にとってもいい変化になる。

Q: 江戸時代、日本は朝鮮から幾度も朝鮮通信使を招き、思想や文化を学んでいました。その時に、築かれた日本と朝鮮の共通の思想的土台とは何でしょうか? そのことは、現在の日本と韓国の対立を解決するために役立つのでしょか?
A: 江戸時代は朝鮮の知的な深い交流があった。今の日韓関係を見ると、深みのある対話がなく、かえって18世紀辺りの知識人の手紙の中に深い対話を見ることができる。今は英語が共通語となっているが、昔はそれが漢文だった。中国と韓国、北朝鮮、ベトナムもそうだが、共通な点が非常に多い。わざわざ西洋の文化を持って対話と失う点も多いと考える。

Q: 韓国の統一が日本に与える良い機会を強調されたと思います。それに関して、先生が語る統一の定義は何ですか。韓国でもさまざまな定義が存在し、最近は統一より統合(Integration)などの単語がより頻繁に使われているとも聞いております。また、どのようなタイプの統一になる場合に日本により良い機会を与えてくれるだろうかお聞きしたいと思います。
A: 非常に大事な指摘だと思う。まさにそれについての文章も書いたことがある。統一は単純な目的であるべきではなく、成功的な統一と失敗的な統一が存在する。アメリカの大企業や韓国、日本が北朝鮮の資源を開発し、原料を外国に輸出して、安い労働力を使い、製品を安く使い、たくさんお金を儲けるのは、完全に失敗した統一でありやってはいけないことである。そのことにより、深刻な貧富の格差ができる。そうではなく、韓国、日本、北朝鮮の国々の人々が良心を持って、想像力を使い、まず朝鮮半島で理想的な国を作ろうと努力するのが建設的な統一である。日本はそのような役割ができたらいいと思う。

他にも多くの議論が行われました。詳しくは動画をご覧ください。

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