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第4回ピース・デザイン・フォーラムを開催しました2024.08.23 | 

7月27日に石川県金沢市で第4回目となるピースデザインフォーラムを開催しました。ピースデザインフォーラムは東京で過去3回開催し、今回は東京以外の地域でのはじめての開催となりました。

2022年2月から続くロシアによるウクライナ侵攻や、昨年の10月から続くイスラエル・ガザ戦争。アジアにおいては中国による台湾侵攻の潜在的危機や緊張感の高まる朝鮮半島情勢。また、2024年は多くの国でトップの選挙が行われる選挙イヤーでもあります。情勢が目まぐるしく変わる中、対立や戦争を回避して、持続的な平和を構築するための新しいビジョンやアプローチを模索する機会として、今回のピースデザインフォーラムが開催されました。

最初に、開会の音楽として、金沢県白山でギター教室を主催しているギタリストの森みつるさんによる演奏がありました。森さんは音楽・ギターを通した人間性の啓発をテーマとして活動をされており、この日は「イマジン」「What a Wonderful World (この素晴らしき世界)」など会場の誰もが知っていて、平和や未来を想起させる音楽を披露。会場は非常に和やかで暖かい雰囲気に包まれました。

ギター演奏で会場を魅了する森さん

「私には夢がある。健全な環境を保つためにアメリカと日本と韓国が協力するという夢を。
私には夢がある。日本と韓国とアメリカが平和のために、相手の思想や文化を尊敬し、認め合うという夢を」

エマニュエル・パストリッチ氏は現状の困難を超えて未来志向で協力することを呼びかけた

続いてのスピーカーはアジアインスティチュート理事長であり、GPF上級研究員であるエマニュエルパストリッチ博士が登壇。エマニュエル氏は「I have a dream(私には夢がある)」と言う有名なキング牧師の演説を引用し、日本と韓国が過去の歴史を超えて未来思考での協力関係を築いていくことと、自身の出身であるアメリカもそこに加わり、普遍的な価値観を共有し未来を構築していくことの価値と意義を参加者に力強く呼びかけました。

「ウクライナ侵攻、イスラエル・ガザ戦争。自分たちのアイデンティティが正しく、相手のアイデンティティは間違っているという暴力的過激主義が世界で横行している。一方で、人種や国籍、宗教といったアイデンティティを超えた、普遍的な価値を追求してきたのが人類であり、この普遍的価値をベースにした平和構築プログラムを世界で提供しているのがGPF」

エマニュエル氏のスピーチの後は、GPFジャパン代表理事の後藤亜也氏による演説がありました。冒頭のウクライナ侵攻やイスラエル・ガザ戦争のいずれの問題の根本にも、「アイデンティティ」による問題が横たわっていることが指摘されました。自分たちのアイデンティティこそが優れており、他方のアイデンティティは我々のアイデンティティに変わるべきだ。または他方は私たちのものであるなどといった極端な過激主義は歴史を通したものであると言及がありました。

一方で、人類は人種や国籍、文化といったアイデンティティーの違いを超えた普遍的な価値観を追求してきた歴史があり、GPFが世界各地で行っている社会プログラムはこの普遍的な価値観を共有することによる信頼関係の構築であると言う新しいアプローチ方法を参加者に紹介。このアプローチが世界のアイデンティティーの衝突、分断の起こっている地域において、平和と安定をもたらすために成果を上げていることを紹介しました。

「私たちが行っているのは、この暴力的過激主義が起こらないように人間関係を構築すると言うことです。アイデンティティーの違いを超えた共通のアイデンティティーを築いていくことによって信頼関係を構築することのアプローチを私たちの理事長であるヒョンジン・P・ムン氏が2009年に発表し、そのことが世界中で注目を集めています。ビジョンを共有するだけでなく、共に時間を過ごす、一緒の活動をする。そうしたことを通じて人間関係ができていく。この人間関係の構築こそが平和構築なのです」

「人類歴史上初めて、普遍的な原則が文章化されたのがアメリカ独立宣言文でした。アメリカのキング牧師は、このアメリカ独立宣言文の精神に基づいて公民権運動を行ったし、インドのガンジーもこの独立宣言文に表されたような普遍的な原則に訴える活動を行いました。普遍的な原則は、文明を変える力を持っています。GPFはそこに注目をし、この普遍的原則をベースとした社会プログラムを世界各地で展開しています」

またアジアにおけるアイデンティティの分断の最前線としての朝鮮半島の分断問題を取り上げ、GPFがこの問題を解決するため解決し、平和な朝鮮半島の統一と東アジアの安定をもたらすために世界で行っているキャンペーン(One Korea Global Campaign)を紹介しました。

「北東アジアにおけるアイデンティティーの問題。それは朝鮮半島の分断問題です。我々が注目しているこの普遍的原則価値に基づくアプローチを朝鮮半島の分断問題に当てがあったときに、新たな視野が開けてきます」

「非核化の代わりに北朝鮮の体制維持を約束するか。もしくは北朝鮮に対して軍事攻撃を行うか。いずれも人権問題の放置や人命被害といった大きな被害が確実に出てきます。
我々が提唱する第3の道、それが平和的統一です。しかしアイデンティティーが全く異なってしまったこの南北2つの国がいかにして統一されるのか。
それを解決するのが、弘益人間と言うアイデンティティーです。これは朝鮮半島の古朝鮮と言う国の建国理念となったもので、南北コリアが共有して持つことのできるアイデンティティです。ですから、この理念に基づいた国を建てるということは、双方にとってWin-Winとなるのです」

「過去、この弘益人間のビジョンに基づいた国家建国のチャンスが2度ありました。1919年に起こった3.1独立運動当時と1945年終戦を迎えたときの朝鮮半島です。しかし、このいずれも失敗したので、今、国際社会がサポートしこの統一の機運を盛り上げていく必要があります。現在は北朝鮮内にも自由経済が広がるなど国内の変化もあります。また日米間が共同首脳声明を出したように、国際的な連帯感も強まってきているが、いかに朝鮮半島の問題についてアプローチをするのかが非常に重要です」

最後に、平和で利他的な人間関係を希求してきた日本人の良さを発揮して、アジアにおける平和を作ることに寄与してほしい。そしてそれを石川から発信していきましょう、と参加者に呼びかけました。

講演の後は質疑応答の時間を持ち、講演の内容を深掘りする質問の他、非常に感銘を受けた、という感想も聞こえました。

 

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