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第10回ピース・デザイン・フォーラムを開催しました | 2025.02.28 | 

2025年2月に江東区(ティアラこうとう 小ホール)で「第10回ピース・デザイン・フォーラム」が開催されました。

オープニングは、和太鼓奏者・千代園剛氏と朝鮮舞踊家・金英琴氏の融合による”One Universe”の見事なコラボ・パフォーマンスで幕を開けました。

講演では、国際情勢と日韓関係の専門家である五味洋治氏、姜英之氏、後藤亜也氏が登壇し、それぞれの視点から現代の課題と平和構築への提言を語りました。また、パネルディスカッションも行われ、三者が日韓関係の進展や第二次トランプ政権への期待など、北東アジアの平和構築について議論しました。

◾️五味洋治氏(フリージャーナリスト)
「終戦80周年に考える、北朝鮮によるロシア派兵と東アジアのこれから」

五味氏は、現在の国際情勢を踏まえながら、ウクライナ戦争と朝鮮半島の関係について深く考察しました。

ウクライナ戦争の停戦交渉において、トランプ氏とプーチン氏がゼレンスキー氏を排除して進める可能性がある。停戦の形次第では、新たな対立を生む恐れがある。朝鮮戦争のように「現状維持」の形で終戦となると、長期的な禍根を残す危険性がある。

北朝鮮の兵士がロシアのクルスク地方で戦っており、すでに4,000人以上が死傷しているとの情報。彼らの派遣は北朝鮮政府への経済支援の一環とも考えられる。ウクライナ戦争ではドローンが主戦力となり、安価に製造される兵器が戦場の様相を一変させている。北朝鮮兵士はこの最新技術を前に、旧来の戦法で戦っている。北朝鮮兵士は死亡時に顔を識別されないよう、自らの顔の前で手榴弾を爆発させるよう指導されているとの報告もあり、その悲惨さが際立つ。停戦後、北朝鮮兵士が母国に帰還せず、戦災復興のための労働力として使われる可能性がある。

韓国・日本・アメリカと、北朝鮮・中国・ロシアとの間で新たな冷戦構造が生まれつつあり、軍事的緊張の高まりが懸念される。アメリカが北朝鮮の核を容認する最悪のシナリオでは、日本や韓国でも核保有の議論が浮上し、地域の安全保障環境が大きく変化する可能性がある。平和を待つのではなく、積極的に作り出すために、韓国との協力を深めることの重要性を強調。エルブリッジ・A・コルビー氏の『アジア・ファースト』を引用し、植民地支配の歴史を無理に忘れさせるのではなく、ゆっくりと和解を進める必要性を指摘。

北東アジアに迫る新たな軍事的脅威の中で、日本は本当に「人間一人一人を大切にする国」になれたのかを自問し、今こそ平和構築への積極的な姿勢が求められる。

◾️姜英之氏講演(東アジア総合研究所 理事長)
「日韓国交正常化60年。両国の努力の継承と発展」

姜氏は、日韓関係の歴史的背景と、より良い関係構築のための方向性について語りました。

1998年の日韓パートナーシップ宣言には「未来志向」という言葉が盛り込まれたが、歴史を直視し真摯に向き合う姿勢が不足している。尹錫悦大統領のもとで日韓関係が改善したかに見えたが、政権交代の可能性がある今、再び不安定な状況にある。韓国の次期大統領が李在明氏になれば、日韓関係は大きく後退する恐れがある。

日韓の未来を築くために、青年同士の交流なども重要だが、過去の歴史における認識の違いが根本的な障壁となっている。1965年の日韓基本条約では、1910年の日韓併合条約を「もはや無効」としたが、日本では「今となっては無効」、韓国では「そもそも無効」と解釈されており、この認識の違いが未だに影響を与えている。村山談話では「痛切な反省とお詫び」が表明されたものの、日本政府の公式立場は「日韓併合は国際的に認められて有効だった」とするものであり、ここに日韓関係の最大の問題がある。

菊池寛の『恩讐の彼方に』を引用し、憎しみを超えて共に未来を築くためには、共通の目標に向かって協力することが重要であると述べた。「未来志向」とは単なるスローガンではなく、人類共通の価値のために共に努力し、統一された朝鮮半島と日本が連携し、東アジアの平和と繁栄を築くことを意味する。覇権主義が世界的に台頭する中で、自由や人権といった共通の価値を基盤にした協力が必要不可欠である。

◾️後藤亜也氏(一般社団法人グローバル・ピース・ファウンデーション・ジャパン 代表理事)
「北東アジアの平和構築のためのアプローチ」

後藤氏は、北東アジアの平和構築に向けた明確なビジョンとして、「弘益人間」(広く人間世界に益をもたらす)の精神を基にした朝鮮半島の平和統一の道を示しました。

ロシア・ウクライナ戦争を始め、世界中の多くの紛争の原因として「アイデンティティの違いに基づいた葛藤」(アイデンティティ・ベースド・コンフリクト)が挙げられる。これに対してGPFは、「全ての人間は人種・宗教・文化・国籍の違いを超えて一つの家族である」というビジョンと価値観のもと、葛藤問題を解決するためのプログラムを提供してきた。

私たちが暮らす日本のすぐ隣に位置する朝鮮半島は、世界で唯一残された分断国家だが、古くから朝鮮民族に共有されてきた「弘益人間」という国家ビジョンが存在する。

現在、北朝鮮では深刻な人権問題が続いているが、韓国でも伝統的家族観の崩壊や格差拡大などの課題が山積している。弘益人間のビジョンに基づき、南北統一を通じて新たな国家を建設し、両国の社会問題を解決するとともに、冷戦の残滓を取り除くことが求められる。

このビジョンは「コリアン・ドリーム」と呼ばれ、韓国では草の根の市民運動が展開されており、1000以上の団体が活動に参加している。一方、政府次元でも昨年8月のキャンプ・デービッド会談で日韓米首脳が「自由で統一された朝鮮半島を支持する」と初めて明言した。

統一コリアが実現すれば、日本にも経済効果や安全保障リスクの低減など多くのメリットがある。朝鮮民族の夢をサポートすることで、統一コリアと日本の関係はより良好なものになると締めくくった。

◾️パネルディスカッション〜戦後80周年、日韓国交正常化60周年。平和構築の可能性を探る

質問:今年は戦後80周年、日韓国交正常化60周年ですが、今後の日韓関係をよりポジティブに展開していくために、必要なことは何でしょうか?

五味:私は歴史問題を忘れてはならないと思います。日本は謝罪をしたこともありますが、「足を踏んだ人は踏まれた人の気持ちはわからない」という言葉もあります。そしてお互いに友達を一人でも増やして、双方を訪問する機会を増やすことが重要ではないでしょうか。

姜英之:お互いを市民同士、正しく理解することが必要で、誤解があっては仲良くなれません。特に「韓国は反日国家である」というのは最も大きな誤解です。歴史教育の影響はあるものの、それだけでなく、韓国人は日本の個別の人間をしっかり見ているのです(韓国に尽くした李方子妃、田内千鶴子、浅川巧の例)。一方で私は(在日)韓国人ですが、韓国人にも注文をつけたいと思います。韓国でも「親日派=裏切り者」と見做した歴史があり、今でもそういう風潮があります。このレッテル貼りを無くさないと行けないですね。

後藤:かつて日本は韓国と関わっていくときに、アイデンティティの葛藤の真っ只中にありました。自分達の(日本人という)アイデンティティは正しいと思っていたので、相手の言語や宗教を変えてあげることで、仲間にしてあげることは良いことだと、本当に思っていたのですが、手痛いしっぺ返しを受けました。日本はアイデンティティを変えられた歴史がないので、今でもその気持ちがなかなか分からないですが、まずは知らないといけません。ただ、日本と朝鮮半島は本当に歴史を共にしてきました。姜先生もお話された李方子妃のお墓は、日本の鳥居に本当によく似ています。また、朝鮮の王族の墓からは新潟の糸魚川でしか採れなかったはずの勾玉が出てきています。深い交流があった証拠です。そういう事実を理解することが大切です。そしてやはり韓国人の友達を作ることが一番の平和構築です。

第二次トランプ政権にかける期待

質問:第二次トランプ政権がスタートして、変化のスピードに驚かされます。特に朝鮮半島問題に関してトランプ政権に期待できることは何でしょうか?

五味:私は実はトランプ政権に期待しています。トランプさんの取引や行動力がプラスに働くかも知れません。第一次トランプ政権の時にも北朝鮮の核を認める形での取引をしようとしたトランプさんに安倍さんが助言することで、厳しい対応をするようになったということがあったようです。今回は北朝鮮が統一を放棄したのに対して、統一政策の見直しをするように伝えてもらうよう、特に韓国から働きかける必要があるかと思います。

姜英之:私も非常に期待しています。2018年6月、シンガポールで金正恩と会談した際、トランプさんは、核を放棄することで、北朝鮮が暗闇の世界ではなく、どれほど豊かになるかというビジョンを見せました。トランプさんがウクライナのレアアースに目をつけて交渉を持ちかけましたが、ゼレンスキーさんは断ったと言われています。実は北朝鮮にもレアアースが大量にあって、世界一あるとも言われています。トランプさんが北朝鮮に対して、これ以上の核開発をストップすることと、レアアースの権利と引き換えに、多額の経済支援をし、北朝鮮を市場経済開放の方向に持っていける可能性もあります。

後藤:シリアのアサド政権が崩壊し、アサドはロシアに亡命しました。これを金正恩はよく見ています。アメリカが北朝鮮をこうすると決めたら、独裁体制というのは一気に崩壊する可能性があります。ですからトランプさんが決めたら一気に変わるかも知れません。金正恩氏がもしも朝鮮半島平和統一の立役者になれば、命を保証してあげられるだけでなく、メンツも立てさせてあげることになります。勝者と敗者ではなく、南北共にWin-Winになるのです。そのような面で私も期待できると思っています。

おわりに

GPF Japanでは、今後もピース・デザイン・フォーラムは国内各地で開催して参ります。
より多くの方々と共に平和構築の波を作って参りますので、ぜひご参加ください。

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