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2025 Japan Young Leaders Assembly が開催されました | 2025.05.08 | 

4月12日、東京国際交流館プラザ平成にて「2025 Japan Young Leaders Assembly」が開催され、多様なバックグラウンドを持つ約200名の若者が参加しました。

本イベントはGPF JapanとGPY Koreaが共催。参加者は脱北した元政府高官や若者たちのスピーチに耳を傾け、北朝鮮の人々の暮らしや彼らが置かれている過酷な状況に思いを馳せるとともに、その解決策について共に考える時間となりました。

脱北者たちの声に耳を傾ける参加者たち

オープニングパフォーマンスでは、日朝コラボレーションパフォーマンス「One Universe」による公演が披露されました。響心太鼓千代組代表の千代園剛さんと、朝鮮民族舞踊家の金英琴(キム・ヨングム)さんによる共演で、開会の場にふさわしい迫力と美しさをもって会場の空気を一変させました。

千代園剛さんによる迫力の演奏

太鼓の重厚な音色と朝鮮舞踊の優雅な舞いが張り詰めた空気を打ち破り、参加者の心をつかみました。また、日本の伝統音楽「ソーラン節」も披露され、参加者は手拍子や掛け声で応じ、会場は熱気に包まれました。

迫力のコラボパフォーマンスに会場は熱気に包まれました

続くスピーチセッションでは、以下の登壇者が発言しました。

• 元イタリア駐在北朝鮮大使館外交官 キム・ドンス博士
• 脱北ユーチューバー キム・ガヨン氏
• 脱北俳優 チャ・ウィソン氏
• 統一活動家 キム・ジュヒョン氏
• 脱北人権活動家 川崎栄子氏
• 学習院大学教授・人権問題専門家 村主道美先生

それぞれのスピーチ内容を下記に簡単にまとめます。

元イタリア駐在北朝鮮大使館外交官 キム・ドンス博士

現在、朝鮮半島の情勢は大きく変化しています。
北朝鮮はロシア・ウクライナ戦争に兵士を派遣し、多くの若者が命を落としています。独裁体制の維持のために、金正恩政権は「統一」や「民族」といった価値を憲法から削除し、韓国を「敵国」と位置づける方向へと動いています。

北朝鮮の体制は、極端な核開発、経済破綻、社会不安、弾圧の強化という4つの特徴に象徴されます。制裁や自然災害による困窮の中、多くの国民が再び飢餓に直面しており、「韓風」、すなわち韓国への憧れが若者を中心に広がっています。しかし、その一方で、情報の遮断と思想統制がより強化され、人権侵害は今も続いています。

こうした中、韓国政府は「自由と人権に基づく統一」、そして「北朝鮮住民こそが統一の主体である」という8.15統一ドクトリンを打ち出しました。これは、金正恩政権の「敵対的二国家論」に対する明確な対抗ビジョンです。

北朝鮮の人権問題に対しては、国連をはじめ各国政府やNGOが大きな役割を果たしてきました。脱北者の証言によって、強制労働や政治犯収容所の実態が国際社会に広く知られるようになりました。しかし、真の変化のためには、より積極的な国際連携と、閉ざされた社会に自由と真実のメッセージを届ける心理的・情報的戦略が必要です。

私たちは、統一や平和の議論の前に、北朝鮮の住民一人ひとりの「生きる権利」や「人間の尊厳」を最優先に据えるべきです。彼らは、韓国憲法上、私たちと同じ「国民」です。その命と自由を無視した統一議論は、真の統一とは呼べません。

そのような中で、「コリアンドリーム」の実現を目指す市民運動が力強く前進しています。昨年9月には、臨津閣で3万人以上が参加する「統一実践大行進」が開催されました。これは、北朝鮮住民の自由と人権、そして朝鮮半島の真の平和統一を願う人々の力の結集でした。

グローバル・ピース・ファウンデーションの文顕進博士は、弘益人間の精神をもって、韓民族が主体的に統一を導こうと呼びかけました。アクション・フォー・コリア・ユナイテッド(AKU)はこの理念のもと、2025年の光復80周年に向けて、1,000万人規模の統一キャンペーンを展開しています。
本日、ここ日本でも、北東アジアの平和を願う熱意ある若者たちが集まっています。

私は、脱北者3万5千人とAKUを代表して、正義ある市民の皆さまの支援に心より感謝を申し上げます。そして、本日ご参加の皆さまが、私たちとともに「コリアンドリーム」の実現に向けて力を貸してくださることを、心から願っております。

脱北青年による証言


脱北ユーチューバー キム・ガヨン氏(登録者約11万人)

皆さま、こんにちは。私は北朝鮮・恵山市で生まれ、2013年に韓国に来た金ガヨンと申します。
私の母は、金日成が訪れた建物を修繕したという理由だけで政治犯とされ、逮捕から40日後に冷たい監獄の中で亡くなりました。最期に母が残した手紙には「良い場所で幸せに生きてほしい」という願いが綴られていました。その言葉を胸に、私は韓国を目指して生き抜いてきました。

いま、北朝鮮では多くの人々が自由も人権も知らぬまま苦しんでいます。その現実を変えるため、私はYouTubeや講師活動を通して、北朝鮮の真実と「統一」の必要性を伝えています。
統一は政治だけではなく、一人ひとりの心と行動によって実現するものです。私は「コリアンドリーム」がその希望の道しるべだと信じています。

未来は、私たちが今日どう生きるかで決まります。皆さんとともに、夢を力に変え、新しい朝鮮半島を築いていきたいと思います。


脱北俳優 チャ・ウィソン氏

皆さま、こんにちは。チャ・ウィソンと申します。私は北朝鮮で育ち、2011年に韓国へ渡り、今では韓国での生活の方が長くなりました。
私は「何の計画もない統一」には反対です。吸収統一は現実的でなく、北朝鮮の体制がすぐに崩れるとは思えません。また、韓国社会との大きな格差が北朝鮮の人々にとって新たな苦しみになる可能性もあります。

私は、連邦制のような段階的で現実的な統一を提案します。たとえ体制が当面残ったとしても、情報と交流が広がれば、北の内部から変化は起きると信じています。

統一はゴールではなく、始まりです。統一後にどう共に生きるかを、今から真剣に議論すべきです。家族が役割を分担するように、社会全体で未来の共生を考える必要があります。
私が描く「コリアンドリーム」とは、北朝鮮の人々が主体として尊重され、朝鮮半島全体が市民の成熟と道徳性で世界に示すような国になることです。

そして私は、いつか母の眠る故郷・両江道の山に、自由に帰れる日が来ることを、心から願っています。


統一活動家 キム・ジュヒョン氏

こんにちは。私はロシア生まれの北朝鮮国籍者で、自由を求めて脱北し、家族とともに韓国へ渡りました。大韓航空の最後の乗客として仁川空港に降り立ったとき、自由を得た喜びと緊張が入り混じっていたことを今も鮮明に覚えています。

現在は、韓国で統一や北朝鮮問題について研究し、統一後に北朝鮮住民が社会に適応できるよう、民主市民教育や支援活動に取り組んでいます。私にとって「コリアンドリーム」とは、自由と民主主義の中で個人の可能性を実現することです。

北朝鮮がロシアの戦争に兵士を派遣した現実を見て、私のかつての仲間が戦場に立たされているかもしれないと感じるとき、統一の必要性を強く実感します。北朝鮮住民が戦争に巻き込まれず、自由と尊厳を持って生きられる社会の実現こそが、私の願いです。

私は今後も、教育・国際協力・意識啓発を通じて、統一に向けた実践的な取り組みを続けていきます。そして本日、この場を通じて、皆さまと共に朝鮮半島の統一と平和を考え、共に行動できることを願っています。


人権活動家 川崎栄子氏

北朝鮮での43年間の生活と、その中で人々が置かれていた深刻な人権状況について語りました。そして、その現実を変えるために脱北を決意した経緯を明かし、参加した若者たちに対し、北朝鮮の人権問題解決とアジアの平和のために行動を起こしてほしいと呼びかけました。


村主道美 学習院大学教授

人権という言葉は、実際に最も深刻に侵害されている場所では、しばしば語られることさえありません。人々はその侵害を自覚することもなく、声を上げることなく亡くなっていきます。私たちは、見えないものを見、聞こえない声を聞く力を持たなければなりません。

現代のアジアには、ホロコーストに匹敵するような人権侵害が存在します。新疆ウイグル自治区でのジェノサイド、ミャンマーのロヒンギャ迫害、そして現在も続くパレスチナ人への暴力。北朝鮮では、数十万人が政治犯収容所に収容され、非人道的な環境で命を落としています。

北朝鮮は、国家が国民を労働力としか見なさず、「弱者を使って強者を抑える」という古代中国の法家思想に似た支配構造を持ち、個人の尊厳を徹底的に奪っています。国民は自己を捨て、指導者の「贈り物」に感謝することが生存条件となっています。

私たちは、これらの人権侵害を、単なる地政学的な問題として片付けてはなりません。国際社会が北朝鮮の核問題ばかりに目を奪われる中で、人権問題は見過ごされてきました。そして中国、ロシアを含む大国の利害関係が、これらの体制を支えています。

しかし、歴史は忘れられても、消えることはありません。私は今年、イスラエルとパレスチナを訪れ、破壊されたパレスチナの町の跡に建てられた公園を歩きました。そのガイドは「これは歴史の抹消だ」と言いました。

私たちは、北朝鮮をはじめとした加害者たちに対し、はっきりと伝える必要があります。

「歴史は消すことができない」と。
そして、正義の声は、世界のどこかで必ず響くのだと。

午後のプログラムでは、午前中のスピーチを受けて、参加者自身が平和に対する考えや想いを1分間で発表する「1分スピーチ」の時間が設けられました。1分という短い時間でのメッセージは参加者にとって非常にチャレンジングな試みでしたが、それぞれが創造的で印象的なメッセージを会場に伝えました。


1分間スピーチをする参加者の様子

「Japan Young Leaders Assembly」は、戦後80周年、日韓国交正常化60周年となる今年に、平和、人権、持続可能な未来に対する青年たちの認識向上とグローバルな協力関係の構築を目標に開催されました。今後も各地の施設や大学で、脱北者による直接の証言を通じた人権問題の啓発活動を行っていく予定です。

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