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グレタさんは好きですか?2019.12.25 |
スウェーデンの「環境少女」ことグレタ・トゥーンベリさん(16歳)が『Time』誌が選ぶ2019年の「今年の人」に選ばれました。同紙が1927年に「今年の人」の選出を始めて以来、最年少の受賞です。
グレタさんは気候変動の危機を訴えて昨年夏に一人で「学校ストライキ」を開始。活動はソーシャルメディアなどを通じて世界中に広がり、今年9月には世界で400万人以上が参加した抗議デモも行われました。
そして、彼女は気候変動解決のための十分なアクションを起こさない各国の首脳たちに対して、「私たち将来世代はあなたたちを許さない」と強い表現で批判しました(国連で行った”How dare you(よくもそんなことを!)”というスピーチは有名になりました)。
「国際的な会議で環境問題を訴える少女」と言えば、1992年にブラジル・リオデジャネイロで行われた地球サミットでのセヴァン・スズキさんを思い出します。彼女のスピーチも伝説と言われ、社会に大きなインパクトを与えました。
Youtubeで見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=N0GsScywvx0
セヴァン・スズキさんとグレタさんが違うのは、グレタさんが賛否両論の議論を巻き起こしたことでしょう。彼女の行動力やリーダーシップを讃える人たちがいる一方、多くの批判も出ました。
例えばプーチン大統領は、「グレタさんに現代世界は込み入っていて複雑なことを話してやる人が誰もいない。アフリカやアジア諸国の人々はスウェーデンのように豊かになりたいと望むが、太陽光発電で行うのか。途上国がそうした技術を利用するのは難しい」と指摘し、トランプ大統領は、「彼女はアンガー(怒り)・マネジメントを学んだ方がいい」と冷ややかに言い放ちました。
そして気候変動の問題から、「グレタさんという若い女性が意見していることが気に入らない男性中心社会が問題だ」というジェンダーに関する議論にまで発展してます。
セヴァン・スズキさんがスピーチした1992年当時と違うもう一つの、おそらく決定的な要因が先進国における格差の拡大でしょう。5月のメルマガでも紹介した「イエロー・ベスト運動」に象徴されるように、環境問題解決のためのコストを「誰が」「どこまで」負担するのかというのは極めてセンシティブな問題です。
ガソリン代の値上げに一喜一憂する低所得層や肉体労働者にとって、「豪華ヨット」に乗って大西洋を横断したグレタさんは浮世離れした存在とも言えます。
「将来世代はグレタ・トゥーンベリを許さない?」というような刺激的なblog記事もありました。
https://himaginary.hatenablog.com/entry/20191214/Lomborg_on_Thunberg
気候変動対策が重要なのは言うまでもありませんが、パリ協定が目指す目標やその計画はかなり野心的、つまり無理があるのも事実であり、それを推し進めれば、他の社会問題解決に振り分けるリソースが減ります。
そのコスト負担を民主主義社会はどこまで許容するのかという全体のバランスを考えた議論と合意形成を考えていかないと、このアジェンダが「富裕層やエリートの趣味」と見られかねないということを「グレタさん現象」は示しているのではないでしょうか。