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Black Lives Matterは連帯を進めるのか、分断を加速させるのか2020.06.25 | 

 5月25日にミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性のジョージ・フロイドさんが警察官から暴行を受けて死亡するという事件が起きた後、全米に抗議運動が巻き起こりました。
 デモでは「Black Lives Matter」というプラカードが掲げられ、SNSでもこのハッシュタグでの記事がものすごい勢いで拡散されています。日本においても、東京・渋谷でクルド人男性が警察官から職務質問を受けた際に暴力的な行為を受けたとして、これに抗議するデモが起きたり、6月14日にはやはり同じく渋谷で「Black Lives Matter」を訴えるデモがあったりしました。

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「Black Lives Matter」は、直訳すれば「黒人の命は大切である」というメッセージですが、黒人が社会的弱者になりやすいという社会構造的な課題があるということで、「Systemic Racism」(制度化された人種主義・差別)に反対しています。今回にデモには黒人だけでなく、多くの白人も参加しているのが大きな特徴であり、ヨーロッパでも同様の運動が広がっています。

 その一方で、一部で運動が暴徒化し、略奪や放火などが起こっており、トランプ大統領は、暴動を煽っているとしてANTIFAをテロ組織と認定するとツイート。「Law and Order」(法と秩序)を強調しています。
 さらに、ヨーロッパ人としてアメリカ大陸を発見したクリストファー・コロンブスをはじめ植民地主義や奴隷貿易を推進したと言われる人の像が撤去されたり、『風とともに去りぬ』や『大草原の小さな家』といった作品が人種差別的として非難されたりと、一種の「文化大革命」的な様相を呈してきています。

 そもそもCOVID-19の感染者と死者が世界で最も多いアメリカで、感染リスクを冒してまで抗議運動をする必要があるのかと思った人も多いかと思いますが、そのような懸念や意見を表明しにくい雰囲気があるのも事実です。
 他の社会運動でも、「われわれに賛同しないのなら、あなたは敵」という傾向は多かれ少なかれ見られるのですが、今回の抗議運動はそれが非常に極端になっているようです。それは、デモでよく見られる「Silence is Violence(沈黙は暴力である)」というスローガンからも見て取れます。
 社会運動が先鋭化していくと、いわゆる普通の人(中間層)は「そのアジェンダは分かるけど、かかわると面倒くさい」と引いていくのはよくありますが、今回もうそうなりかけているのではないでしょうか。

 さて、人種問題においては、「White Privilege」という言葉が最近よく使われます。これは白人の特権や既得権益という意味です。
 ただ、白人だからアドバンテージをみんな持っているかと言われれば、当然社会的に脆弱な状態になっている人もいます。その人たちから見れば、「なぜ黒人や性的マイノリティ、移民などだけが社会的に注目され、支援の対象になるのだ」という疑問や不満があり、そういった「サイレントマジョリティー」の存在が2016年のトランプ大統領当選の背景にあると言われています。

 また、アメリカではCOVID-19の影響により4月だけで2,000万人以上の雇用が失われました。アメリカの雇用者は総数で1億5,000万人程度ですから、約15パーセントの雇用がたった1か月で失われたことになります。
 2008年のリーマンショックの時の失業者はひと月に数十万人程度ですから、実にケタが2つ違うインパクトなわけです。

 このフラストレーションが今回のBLMで爆発し、先鋭化した運動に対する保守派からの反作用も生まれ、社会の分断がますます進んでいきそうです。

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