HOME >  家族(ファミリー)を脅かすものは何か?

家族(ファミリー)を脅かすものは何か?2021.03.25 | 

現在、選択的夫婦別姓を認めるかどうかの議論も活発になってきています。自民党の中にも近く議論が再開されるのを前に、制度の導入に賛成する党の議員らが新たな議員連盟を立ち上げることになりました。呼びかけ人には、代表を務める浜田元防衛大臣をはじめ、野田聖子幹事長代行や岸田前政務調査会長らが加わる予定で、「今の制度は、姓の変更を望まない人にとっては個人の尊厳を傷つける問題もあり、結婚を断念するなどの事態を招きかねない」などとして、賛同を呼びかける方針だそうです。

もちろん、自民党内には根強い反発もあります。高市早苗氏をはじめとする国会議員でつくる50人の議員連盟「『絆』を紡ぐ会」は、全国の自民党の道府県議会議長あてに出した文書で以下のように主張しています。

現行の夫婦同氏制度は、日本人が大切にしてきた家族の絆や一体感を維持する上で重要な役割を果たしており、同時に、子育てや夫婦親族相互扶助の環境づくりの土台になってきた。

また、北海道の同性カップル3組が、同性婚が認められないのは憲法が保障する婚姻の自由や平等原則に反するとして、国に損害賠償を求めた訴訟の判決が3月17日に札幌地裁でありました。
「同性婚を認めないのは、婚姻の自由や法の下の平等を定めた憲法に違反する」というこの判決の「解釈」に関しては様々な意見が分かれています。ただ、少なくても婚姻によって生じる法的・制度的な便益を同性カップルが享受できないのは、憲法14条1項の法の下の平等に違反するという判断を下したとは言えるでしょう。全国の5つの地裁で同種訴訟がある中、初の司法判断となります。尚、国の損害賠償に関しては退けられました。

このように「家族のありかた」について社会で意見は大きく分かれており、家族の価値や一体感を重視する保守的な考え方を持つ人たちの中には、同性婚や選択的夫婦別姓制度は、現行の「家族のありかた」を危機にさらすものと考える人が多いようです。
GPFでも平和のためには、「Strengthening Families (家庭の強化)」が必要だと考えています。では、家族をめぐる最大のリスクとは何なのでしょうか?

それは一言で言えば、「結婚しない人が増えた」ということです。つまるところ、少子化の主原因もこれです。
いくつかの例外はあるとしても、日本では結婚することが家族形成や出産・子育てのスタートですから、スタートラインにさえ立たない(立てない)人が増えれば、子どもの数も家族の数も当然減ります。

50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合を生涯未婚率と言いますが、1970年の時点では男女とも5%に満たなかったこの割合が、2015年の段階で男性24.2%、女性14.9%まで上昇しました。(2015年の国勢調査)
では、みんな結婚したくないのかというと、日本の若い独身男女の9割がいずれは結婚したいと思っているにもかかわらず、その男性の7割、女性の6割には交際相手がいないというのが現状です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/463d3ccf6ede0087534ff8ab8d1543224b42f905

世帯数の推移で言えば、「単独世帯」+「夫婦のみ世帯」の割合が2016年には全世帯の半数を超えました。(厚生労働省2018『グラフでみる世帯の状況:平成30年国民生活基礎調査(平成28年)』)

これらの傾向は、「最近の若者は…」というような価値観やライフスタイルの変化というよりは、社会の構造的変化による影響が大きいです。敢えてシンプルに言えば、格差の拡大と子育てに関するコストの増大が背景にあります。こちらはまた改めて詳しく紹介したいと思います。

特に男性は年収と有配偶者率は比例しており、年収が低いため結婚できない男性は社会的なつながりが弱い傾向が指摘されています。
つまり、上野千鶴子が言うようなポジティブな意味での「おひとりさま」ではなく、社会から孤立した人たちが増えていることこそ、「家族」を脅かす最大のリスクです。
これは主義・主張の違いを超えて社会全体で取り組まなければならない問題と言えるでしょう。

前のページへは、ブラウザの戻るボタンでお戻りください。
このページのトップへ