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環境と経済、どっちを選ぶ?2019.05.25 | 

 昨年からフランスで「イエローベスト(ジャケット)運動」という政府への抗議運動が続いていることを皆さんもお聞きになったことがあるでしょう。昨年11月17日に約30万人のデモがパリで行われ、その後も毎週土曜日に継続して行われています。
 
 きっかけは、燃料税の引き上げです。フランスのマクロン大統領は地球温暖化(気候変動)対策としてエコカー(特に電気自動車)の普及を目指しており、その一環としての政策だったのですが、これがディーゼル車やガソリン車を使っている層から猛反発を受けたわけです。
 
 フランスでは、運転者は遠くからも見えやすい「蛍光色」のベストを車内に常備することが法律で定められており、この「イエローベスト」がデモや運動のシンボルになりました。
 マクロン大統領は規制緩和や公共サービスの削減、主に富裕層向けの減税など、ビジネス界や富裕者向けの改革を推し進めてきました。結果、企業経営者からは高く評価されてきた半面、それ以外の層は不満を溜めてきており、今回これが爆発した形です。

 この運動は、地球環境のことを考えれば当然、エコカーへの乗り換えが望ましいわけですが、そのコストを誰が負担するのかという普遍的な課題を突き付けたと言えます。
ル・モンド紙は「エリートが地球の終わりを語る時、僕たちは月末に苦しんでいる」というルポを発表しましたが、まさに環境対策をやっている余裕などないという層の率直な気持ちが表れていると言えるでしょう。

 そのような人たちの気持ちを汲み取ってトランプ大統領も気候変動に対する国際的な枠組みであるパリ協定を脱退しました。「ブラジルのトランプ」と呼ばれるジャイル・ボルソナロ次期大統領もパリ協定からの離脱を示唆しています。
 かと言って、気候変動への対策を疎かにした場合、気候変動の影響を最も受けるのが脆弱な貧困層であるのも事実です。

 また、ノートルダム大聖堂が4月に火災に見舞われましたが、その後短期間に1,000億円を超える寄付が集まりました。
 これに対しても、「そんなに寄付する余裕があるなら、なぜ貧困対策にもっと寄付しないのか?」「人間より石が優先されるのか」といった批判があがりました。

 この運動は、長期的な地球環境対策と短期的な貧困対策のどちらを優先するかという問題と、そのコストを誰が負担するのかという問題を浮かび上がらせました。
 そして根底にあるのは、経済格差によるところの「社会の分断」です。GPFは「One Family under God」をビジョンに掲げていますが、家族の中に貧富の差があるのは不自然なわけで、この問題にも取り組んでいます。

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