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「フィルターバブル」って知っていますか?2019.09.25 | 

 皆さん、日々Googleで検索していると思いますが、その検索結果が人によって違うということをご存知ですか?また、FacebookをはじめとするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)においても、タイムラインに流れてくる情報は一律ではありません。

 検索エンジンやSNSなどは、ユーザーの検索履歴、実際に何の記事をクリックして読んだか、「いいね!」したのか、買ったものは何か…などの行動パターンや価値観・思想を学習します。
そして、ユーザーの思想や行動特性に合わせた情報を中心に表示するようになります。Amazonのレコメンド機能なんかはその典型かもしれません。
 
 このように、接する情報をフィルターにかけ続けられることで、ユーザーは自分の興味・関心に合うものだけに囲まれて、逆にそれ以外からは遮断されてしまうようになります。それが、イーライ・パリサーという人が、2011年にベストセラー『フィルターバブル──インターネットが隠していること』の中で提唱した「フィルターバブル」という概念です。

 今、データ活用の技術やアルゴリズムの発達により、私たちが見ているインターネットの世界は、よりパーソナライズされたものになっています。その結果、ユーザーはどんどん情報のタコツボに入り込み、自分と違った立場・視点の情報や価値観に接する機会が減少しています。
 例えば、2016年にトランプ大統領が当選した時、多くのリベラルの人たちは、「自分の周りでトランプに投票した人は誰もいない」とSNS上で言っていました。きっと彼らが日々SNSでつながっている人たちにトランプ支持者はいなかったのでしょう。つまり、トランプ支持者がフィルターで弾かれていたわけです。

 インターネットは多様な価値観や言説が飛び交う世界です。そんな中で、自分と違う(もしくは反対の)価値観や意見と日々接するのはストレスフルでしょう。それよりも、自分の似た考えを持った人たちだけで固まった方が居心地もいいし、「いいね」がもらえて承認欲求も満たされます。

 原発問題一つとっても、2011年の福島原発事故の後、反対派は賛成派を「原子力ムラ」「御用学者」と批判しましたし、賛成派は反対派を、科学的根拠に基づかない主張をする「放射脳」だと揶揄してきました。相手をけなし、罵倒することで自分の考えはますます強固になっていき、違う視点を受け入れる余地をなくしていきます。
 また、それが事実に基づかない「フェイク」であったとしても、自分の価値観と合ってさえいれば悪意なくリツイートやシェアで拡散してしまい、結果として「デマ」が広がることにもつながります。

 このように今、世界では民族紛争や宗教対立、内戦、そして戦争といった大きなコンフリクトだけでなく、私たちの身近なレベルにおいてもSNS上での小さなコンフリクトが起こっています。そして、その積み重ねによる社会の分断が進んでいます。
 そのような問題意識から、英国の新聞ガーディアンは、「Burst your bubble(バブルを破れ)」というコーナーを設け、ガーディアン読者に多いリベラル派以外の論考を紹介するという取り組みを始めました。

 私たちも自分の接している情報にフィルターがかかっていること、そして自分と違う立場の意見を聞くとともすると感情的になるということを認識すること、そして自分の考える「正義」を相対化することが大切なのではないでしょうか。日韓の感情的対立を見ると、それを痛感します。

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